ここ数年、「世界一子どもが幸せな国」として注目を浴びているオランダですが、当のオランダの人たちはそのことについてどう思っているのでしょうか? 本当にそう感じているのでしょうか? はたまた、そもそもオランダ人は自分の子どもに対してどういったことを考えているのでしょうか? また学校選び方や、保護者の仕事の仕方などは一体どうなっているのでしょうか?

 

今回は、筆者の子どもと同じ学校に通うオランダ人の保護者、アラードさんとテッサさん夫妻に話を聞いてみました。

共働き夫婦の典型的なオランダスタイル

アラードさん、テッサさん夫妻には4人のお子さんがいます。上から10歳、8歳、6歳、4歳。オランダでは4歳から小学校が始まります。つい最近、一番下の子がめでたく4歳になったので、同じ学校に入学したばかり。つまり今は、4人全員が同じ小学校に通っているのです。

アラードさん、テッサさん夫妻の働き方は、小さい子どもを持つオランダ人には良く見られるスタイル。アラードさんは週4日勤務で、テッサさんも週4日勤務です。平日の休みをお互い別の曜日に取得して、さらにお互いに週1日は自宅勤務をして子どもたちの面倒をみています。

まずはオランダが「世界一子どもが幸せな国」と言われることについてどのように感じているのかについて聞いてみました。

「私たちもそのように言われているということは良く聞きます。実際にオランダでは子どもたちを安全にサポートする様々な仕組みや制度、環境が整っているとは感じています。」

オランダでは街中のいたるところに緑が溢れ、公園が多く、そして真冬でも子どもたちが元気いっぱいに遊んでいる姿をあちらこちらで見かけます。

そもそもオランダの学校には宿題がほとんどありません。ましてや塾なるものもないので、学校が終わった後は、まるまる子どもたちの遊び時間です。もちろん、サッカーやホッケーなどのクラブに所属している子どもも多くいますし、ピアノやバイオリン、バレエなどの習い事をしている子もいます。宿題がないことや塾がないことを除けば、その辺はあまり日本と変わらないかもしれません。もちろん、ここが大きな違いでもあるのですが…。

日本だと、まずは子どもに「しっかり学校で勉強して欲しい」という気持ちがあるかと思います。例えば、あえて分かりやすく表現してみると、将来、子どもが良い人生を送れるように「良い学校に行って、良い大学に行って、良い会社に入って」というような。

こうしたことをオランダ人は思っているのか、ちょっと聞いてみました。

「私たちが子育てで大切にしていることは、子どもが大人になった時に、本人がなりたい自分になれるようにしてあげたいということです。そのためには自分に自信を持たせてあげたいし、自分の可能性にも気づいて欲しい。もちろん、他人のことも尊重することを忘れてはいけません。このようなことを身につけて欲しいと思っています。」

「今の学校を選んだのも、もちろん近所で通いやすいということもありますが、その子が持っている可能性を十分に引き出してくれて、伸ばしてくれると思ったからです。勉強以外に、その子が持っている可能性を伸ばしてくれるということが一番重要だと思ったからです。」とおっしゃっていました。

もちろん、オランダ人でも様々な意見があると思います。しかし、子どもの将来に対する考え方が、はじめから日本人とオランダ人では違うのではないかと感じました。

オランダは、とにかく自己実現をとても大切にしていますし、個性や一人ひとりの考え方をお互いに認め合っています。それは人種や生き方が違っていても同じです。よくオランダ人は「他人のことを全く気にしない」と言われるのですが、こうしたことの裏返しなのかもしれないと感じました。そして、このような意識や考え方が、生活がしやすく、そして子育てしやすい理由の一つではないかと感じました。

ワークシェアの課題

オランダは確かに子育てをする上では、非常に良い環境であることが実感できます。アラードさん、テッサさんご夫妻も、「ヨーロッパの他の国と比べても子育てをする上では良い環境ではないか」と言っています。

それでは敢えて「不満はないのか?」と聞いてみたところ、「産休、育休がもっと欲しい」とのこと。以前、1more Baby応援団の視察でオランダの産休・育休制度について聞いた際に、「あまり長い産休や育休は、社会復帰の妨げになるから敢えて長くてしない」と聞いたこともありましたが、テッサさんはこの事が不満のようです。

また、子育て期においてはパートタイム(日本でいう正社員の時短勤務に近い制度)での勤務を選択する男性や女性もいますが、パートタイムの管理職比率はフルタイム勤務の人と比べるとまだまだ割合が低く、キャリア形成という面でみると、やはり不利な面もあるようです。

特に女性の場合は、20代後半から30代前半のバリバリ働いてキャリア形成をしていきたい時期と、結婚や妊娠のタイミングが重なってしまうことも多いようで、この辺りは日本と本質的な問題は同じかなと感じたりもします。

もちろん、オランダのワークシェアは世界で最も進んでいると言われていますし、テッサさん自身も「オランダは仕事と私生活のバランスがとても取りやすい」という点は高く評価しています。また、仕事の私生活のバランスをいかに保つかを、会社の従業員だけではなく経営陣も常に考え、そして実践しているところがオランダの良いところではないか?という話もしてくれました。

このように、「働き方」や「子育て」というのは、どこの国でも非常に難しい問題だと思います。また、この二つはお互いに密接に関わり合っていることでもあり、片方だけで解決する問題でもないような気がします。

オランダの社会には子どもたちの幸せを願う空気が満ち溢れているようにも感じますが、そのためにはまずは自分たちが幸せであることが必要だと考えているように思います。さらに、もし生活や働き方に問題があれば、社会や会社の中でみんなで話し合って解決するという共通認識がしっかりと根付いているように思います。

日本にとっては、むしろこのような考え方のほうが参考になるのではないかと感じています。

オランダ人の考え方、ぜひ、参考にしてみてください。

吉田和充
ニューロマジック・アムステルダム /クリエイティブ・ディレクター・保育士
19年間大手広告代理店でクリエイティブ・ディレクターとして勤務したのち、
2016年、子どもの教育環境のためオランダへ移住。
400本以上の大手クライアントのキャンペーン/CM制作などのクリエイティブを担当
食品の地域ブランド開発、化粧品商品開発、結婚式場のブランディング、
田んぼでのお米作り、食品マルシェを核とした地域コミュニティ開発
飲食店や通販事業会社の海外進出プロモート、
皮革製品ブランドのブランディング、企業SNSアカウントの運用など担当。
書籍出版、ニュースサイトなどでの執筆記事、講演など多数。
現在は、オランダと日本の企業を相互につなぎながら、マーケティング、ブランディング
広報広告、インスタレーション制作、イベントなどクリエイティブにまつわる領域で活躍。