「世界でいちばん子どもが幸せな国」と言われているオランダですが、その背景の一つにあるのが、「地域ぐるみで育児をおこなっている」ということです。

そうした「まちと育児の良い関係」を象徴しているのが、オランダの子どもたちにもっとも人気があり、国民的スポーツでもあるサッカーです。

今回は、私たちが訪問したオランダのとあるサッカークラブのお話です。

地域で子どもたちを支えるってどういうこと?

昨年秋、私たち1moreBaby応援団では、世界一子どもが幸せと称されるオランダを訪問しました。

そのときに訪れたのはユトレヒト郊外にあるPVCというサッカークラブです。同クラブのマネージャーであるピーターさんとヘンリーさんにお話を伺うと、こんなセリフが出てきました。

「子どもたちが参加する地域のクラブは、その地域の企業や自治体、近隣住民、そしてもちろん親である私たちがサポートすることで成り立っています」

具体的な話で、もっともわかりやすいのが会費です。年間130〜170ユーロ(日本円で17,000〜21,000円程度)ととても安いのだそうです。それは地域の企業がグラウンドに企業看板を設置する対価として運営費を出してくれたり、自治体関連の財団が非常に安い値段で土地やクラブハウスを貸してくれたりしているからなのだとか。

 

その他にも、クラブハウスでは子どもたちの父母がボランティアでバーを運営し、その収益を運営費にあてています。そうしたクラブハウスのバーには、地域住民も気軽に足を運んでいるといいます。

「オランダの有名なサッカー選手の1人、ファン・バステンさんはこのあたりの出身ですが、彼のお父さんはよくここのバーに来て、子どもたちのサッカーの様子を見守ってくれていました」(ヘンリーさん)

ちなみに平日の昼間には、このクラブハウスは学童保育としても利用されているそうです。

親は得意分野で何かしらのお手伝いをする

そもそも、親のボランティア参加は、同クラブに参加するための絶対条件なのだといいます。そういうと、「なんだか窮屈そうな、狭く閉ざされた世界だな」と感じるかもしれませんが、そんなことはありません。とてもオープンです。

「子どもたちはみんなで育てる」というのが、オランダの人たちに浸透しているからです。

私たちが訪問した小学校でも、ちょっとした託児スペースが設けられた公園でも、プリスクールでもそうです。子どもを預ける親自身が交代で保育をするという、親子参加型保育施設でもそうでした(むしろ親子参加型保育施設は、その好例だといえるかもしれません)。

訪問当時、オランダのVVVというプロサッカークラブでコーチをしていた藤田俊哉さん(現在はイングランドのサッカークラブに所属)もこんな話をしていました。

「地元への愛着って、日本の比じゃないんですよ。オランダは地域のつながりがすごく強い。みんな生まれ育った街が大好き。日本のサッカー界では、“地元密着のサッカーチームを”って頑張っているけど、オランダではそんなことをする必要もない。だって好きだから(笑)」

そして、地元のサッカーチームから有望な子どもが育って、アヤックスのようなビッグクラブへステップアップしていくことを悪く言う人もいないのだそうです。むしろ、みんなが応援して、背中を押してあげるのだとか。日本だと「地元を見限るなんて」といった声が聞かれることもありますが……。

そういうところにも、「地域で子どもを支える」というオランダの人たちの考え方がにじみでているのではないでしょうか。

両親が生き生きと楽しく生活することが、子どもたちの幸せにつながる

少し話がそれてしまいました。話を戻しますと、サッカークラブにしても学校にしても、とにかく親や地域が積極的に関わろうとするのがオランダなのです。

そしてここも大事なポイントですが、みなさん楽しみながら関わっています。

たとえば子どもの試合が終わったあとに、親も同じグラウンドでシニアサッカーをしたり、クラブハウスのバーでビール片手に談笑したり、彼らが“プレイステーショントーナメント”と呼ぶサッカーゲーム大会をしたり……。「両親が生き生きと楽しく生活することも、子どもたちの幸せにつながっていると思いますね」とは、先のピーターさんの談です。

このように、オランダでは「まちと育児の良い関係」が築かれています。今回はサッカーに焦点を絞って見てきましたが、それ以外の場面でもそのことはつくづく感じさせられました。

親も自分の子どもだけでなく他の家族の子どもにも関わっていく、そして企業や自治体が積極的にサポートしていく。そのようにして地域で子どもを支え、見守る社会ができていくと、子どもたちは今よりももっと幸せに暮らせるのではないでしょうか。