ライフスタイルが妊娠に関係することはなんとなく、感じられておられると思います。
今回はライフスタイル、特に食生活に関わる因子を中心に、妊娠するまでにかかる期間に影響を及ぼす因子についてお話しします。
今回、ご紹介する研究はHassan MAHら( Fertil Steril 81; 384-392, 2004 )の研究で、とても重要な研究です。また、この要因は自分の意志で改善できることができる要因ですので、たぶん皆さんがライフスタイルを再考するのに役立つと思います。

この研究では体重、喫煙、アルコール摂取、コーヒーや紅茶の摂取、脱法薬物の使用、性交回数、生活水準について検討しています。このうち、妊娠までにかかる時間に影響した項目は、女性の体重、女性の喫煙、男性のアルコール摂取、女性のコーヒーや紅茶の摂取でした。
体重に関しては、以前に取り上げましたので(2019.7.02)省きますが、体重は妊娠するまでの期間ばかりでなく、お話ししたように、胎児・新生児の死亡率にも関係するので、とても重要な要因といえます。

喫煙本数が増加するほど、妊娠までの期間が長くなる

図1をみてください。この図は5つの要因(女性の喫煙、男性の喫煙、女性のアルコール摂取、男性のアルコール摂取、女性のコーヒー・紅茶の摂取)による妊娠までにかかる時間の変化を示しています。
まず、女性の喫煙ですが、グループIが喫煙なし、IIが日に5本以下、IIIが6から10本、IVが11から15本、Vが16から20本、VIが21本以上です。このように、喫煙本数が増加するほど、妊娠までにかかる時間が長くなります。
しかし、男性の喫煙は、喫煙本数が増えても妊娠までにかかる期間には影響がみられませんでした。この研究では、妊娠までにかかる期間には影響がみられませんでしたが、その他の研究では、精子の質に影響する論文が多数報告されているので、男性においても喫煙は気をつけられた方がよいと思います。

アルコール摂取量が多い男性は妊活に影響大!

次に、アルコール摂取ですが、グループIがアルコール摂取なし、IIが週に5単位以下、IIIが6から10単位、IVが11から15単位、Vが16から20単位、VIが20単位を超えた量です。一単位は純アルコールが20gです。
男性では、週に20単位以上摂取る方では、有意に妊娠までにかかる期間が延長しています。また、女性では週に15単位を超えてアルコールを摂取される方がいませんでしたので、影響が出ないとされています。しかし、もし、これ以上飲用されると、影響が表れる可能性や、妊娠中の胎児のへの影響が多数報告されていることを考えると、女性においても気をつける因子であることは間違えないと思います。

コーヒー、紅茶が妊娠に影響を与えるのは1日何杯目から?

次に、女性のコーヒーや紅茶の摂取ですが、グループIが摂取なし、IIが日に5杯以下、IIIが6から10杯、IVが11から15杯、Vが16から20杯、VIが20杯を超えたグループです。
交絡因子を調整すると有意差はなくなるのですが、日に7杯以上摂取されて方では、妊娠しにくくなるようです。コーヒーや紅茶は日常よく飲んでいる因子ですが、リラックスするにはよいと思うのですが、過度の飲用には気をつけたほうがよいようです。

妊娠に対する負の生活要因が重なるほど妊娠しにくくなる

このように個々の要因でも影響があるのですから、影響する要因が複数個になれば、重なるほど影響力が強くなると考えられます。この研究では、さらに、負の影響を及ぼす要因の数による影響について検討していますので、ご紹介しましょう。

まず、負の生活要因として、女性のヘビースモーカー、男性のヘビースモーカー(>15本/日)、多量の飲酒(>20単位/週)、頻回のコーヒー・紅茶摂取(>6杯/日)、女性のBMI(>25㎏/m2)、剥奪スコア(生活水準そのものを直接的に測る指標;数値が高いほど生活水準が低い)(>60)、女性年齢(>35歳)、男性年齢(>45歳)をあげ、これらの要因の数と妊娠までに要する時間とについて検討しています。

図2をみてください。この図は、負の要因数が0から、5以上までに6つのグループに分けられ、それぞれのグループでの妊活を始めてから妊娠に至るまでに要する時間を示しています。負の要因数が0の人は妊娠までに3.4か月かかっています。負の要因数が増えるに従い妊娠までに要する時間も増えています。4つの負の要因を持つ方では、15.1か月、5つ以上の方では、25.0か月かかっています。要因が重なるほど、妊娠しにくくなることがわかりました。

ライフスタイルを改善した効果が表れるまでは最低3カ月

以上より、ライフスタイルの色々な要因が妊娠に関わり、しかもライフスタイルの負の要因数が多いほど妊娠するまでの時間に大きく関わることが理解できたと思います。
現在、行っている習慣を変えるのはなかなか大変とは思いますが、ご自分が気付き、変えようと思えば、変えることができる要因がほとんどです。
現在、妊娠しようとして頑張っているのになかなか妊娠しないようでしたら、これらの負の要因の数を減らすことも考慮されてみることもよいと思います。また、精子や卵子は発育し、射精または排卵するまでに約3か月の期間がかかります。
そのことを考慮すると、ライフスタイルを改善しても、効果が表れてくるには、最低3か月ぐらいかかると思います。気長に根気よく続けることも大切だと思います。