はなわさんといえば、人気番組「有吉ゼミ」(日本テレビ系)で、柔道に励む息子を応援する父という姿が目に浮かぶ人も多いと思います。

はなわさん自身も、「今のはなわ家の中心には柔道がある」と言い切ります。でも、いったいなぜ「柔道」だったのでしょうか。そしてはなわさんの考える教育方針とは?

後編となる今回は、父親として3人の子どもたちと向き合うはなわさんのありのままの日々についてお聞きしました。

──テレビを拝見していると、お子さんはみなさん坊主ですよね。はなわさん自身は独特な髪型ですが(笑)。お子さんの髪の毛ははなわさんが刈っているんですか?

「そもそも僕は昭和っぽい子どもが好きで、あんまりおしゃれな髪型は好きじゃないんですよ。自分はこんな髪型、角みたいなのが生えていますけど、本当にこんな髪型しているやつとか嫌いなんですよ。絶対ダメ、許せない(笑)。だから子どもたちはずっと坊主、しかも五厘刈り。坊主にするのは僕の役割です。でも最近では一番上の子は自分でバリカンを使えるようになったので、自分でやっちゃうことも多いんですが」(はなわさん、以下同様)

子どもが柔道をはじめたきっかけと、はなわさんの想い

──そんな坊主頭のお子さんたちですが、柔道に励む姿が印象的です。どういったきっかけで柔道を始めたんですか?

「実は、柔道は自分がやるって言ったからやらせているだけなんです。別に僕がやれなんてひと言もいっていません。僕自身も柔道家でもなんでもないですからね。あるとき柔道の道場に連れて行ったら、勝手に『やりたい』って言ったんで、それならやりなよってなっただけ。次男も同じです。長男と違ってずっとやってなかったんですが、佐賀に移住してから、次男が自分から『やりたい』と言ったので道場に連れて行きました。三男については、『友だちがいるからやりたい』って」

──お子さんが自発的に「やりたい」と言ったから始めたんですね。実際に柔道を始めてみていかがでしたか?

「柔道は本当にすごく良いですね。柔道と出会えて本当によかったなって思っています。柔道をやらせている理由も、今後もやらせていきたいと思っている理由も、別にオリンピックに出るとか、全国大会で優勝するとか、世界に出ていって戦うとか、そういうことではないんですね。最終的な目標は、ただ人として立派になってほしいということ。その結果、笑顔で幸せに暮らせるようになることなんです。オリンピックに出ていたってその後の人生が暗いものだったら何も意味が無いわけです。実際、柔道を引退後に人としての道を外れてしまうケースもありますから。とにかく、柔道を通して、常にエネルギーあふれる、笑顔あふれる人間になってほしいという思いを持っています」

──具体的には、柔道を通してどういったことが学べると感じていますか?

「人として大切な礼儀や、縦社会の立ち振舞い方、人を敬う気持ちなど、人として大事なことが学べていると思います。遅刻でもしようものなら、本当すごく怒られますからね。まわりの先輩たちも仲間もそうですけど、遅刻はしない、先輩への敬意は忘れないということでやっているので、自分だけやらないということはできないし、今は長男がキャプテンというポジションをやっていますから、チーム全体をまとめないといけないという意味でも、すごく人間的に鍛えられている感じがあります」

子どもが幸せになることが夢

──ベストファーザー賞受賞のときにも、「子どもが幸せになることが夢」というようなことをおっしゃっていましたよね。

「幸せって何かっていうことになってくると思うんですけど、本当に子どもが幸せに暮らせるってなんだろうって思ったときに、常に笑顔でアグレッシブにエネルギーに満ち溢れているような人間になってほしい、人として立派になってほしい、人から信頼されるような人になってほしいというような感じで、普通の親が思っているようなことと同じことを思っていますし、願っています」

愛情があっての放任主義

──テレビを見ていると、明るいご家庭のように見受けられます。実際の生活はどんな毎日なのでしょうか?

「今は柔道が中心にありますね。特に長男は、柔道で毎日朝6時に出て、夜も9時くらいに帰ってくるので、会話もクソもない生活ですよ(笑)。『最近調子はどう?』って聞いて、『ああ』。『ちゃんとやってんの?』って聞いて『ああ』。『きつかった今日?』って聞いて『ああ』みたいな。会話って言ってもこんなもんしかなくて、でも、実はそれで十分だとも思っていて。別に会話にならなくても、なんとなく心で通じ合っていればいいと思っていますから。根本のところで繋がっているというか」

──進路については、お子さんと話し合ったりしたことはありますか?

「僕の基本的な教育理念は、放任主義。基本、親が『こうしろ』『ああしろ』と言ってはだめだと思っています。僕自身、親からは何も言われたことがなくて。もちろん愛情は感じてきましたけど、そういう放任で育てられてきたので、僕も愛情は注ぎつつ放任主義で子どもたちと向き合っています。自分でやると決めて動くということには、責任が発生します。自分でやると決めたということは、最後まで自分の責任でやりなさいということなんです。だから、自立させるという意味で、自分で決めさせるのはいいことだと思っていて。特にスポーツとかをやっていると、なんでもかんでも『あれをやれ』『これをやれ』と指導されます。そうすると、どうしても言葉を待っちゃうというか、指示待ちになってしまう可能性もあって、それはよくないと思っています。先ほども言いましたけど、やりたいって言ったから柔道をやらせました。それって、一方では、やりたいって言ったからには辞めんなよということでもあるんですね。もちろん『辞めたい』って言ったらすぐに辞めさせますけど、そのかわり辞めるなら、絶対にもう一回『やりたい』って言っちゃだめだって伝えています。自分の言葉に責任を持たせるというか、そういうことを考えて」

──放任主義だけど愛情も注いでいるというお話がありましたが、愛情はどのように注いでいるんでしょうか?

「特にいちばん下の子はすごくかわいい盛りなので。体形がよくて、触り心地がいいので、たくさんスキンシップを取っています。でも、あんまり触ると嫌がるんですね。だからいろいろ作戦を考えていて、最近は『良いことを教えてあげるからおいで作戦』をやっています。『良いことを教えてあげる』と言って呼んで、小さい声で『おまえのこと大好きなんだよ』ってささやいて触れ合うんです。そうすると『そんなのいいよ! 全然良いことじゃないじゃないか』って言ってはねのけられる。でも、もう1回『次はぜったいに良いことを教えてあげるから』って言って同じことをして。『もうだまされないぞ!』なんて言うんですが、やっぱりしつこく『次はぜーったいに良いことを教えるから』っていうとやっぱり来ちゃう(笑)。なぜかというと、7回に1回くらいは本当に良いことを言うようにしているから。『今度の練習頑張ったら、ベイブレードを買ってあげるよ』とか『練習の帰りにコンビニに寄っておもちゃを買ってあげる』とかって言うと、『うお、まじかよー。ホントホント? すげー!』って本気で喜んで。だから、どうしても騙されちゃうんです」

夫婦が対立しない秘訣とは

──奥さまに対しては、いかがですか?

「嫁に対しては、中学校からずっと一緒なので、もちろん愛情も持っているんですけど、それ以上に十二分に性格とかスタンスがわかっているので、お笑いのコンビで言うならば“相方”のような存在です。基本的には、嫁の意見はすべて尊重していて、バトることはほとんどありません。対立することはないんです。どんなことでも基本は『はい』『OK』『わかった』って応えています。なぜかといえば、喧嘩をしだすと止まらなくなるっていうのもあるんですけど、向こうが折れないことがわかっているから。もう120%折れません。だから、抗ってもこっちが怪我するだけということがわかってて。たとえば、家の中の照明ってありますよね。理由はわからないんですけど、嫁は明るいのが嫌だというこだわりを持っていて、いつも部屋が薄暗いんですよ。小洒落たバーみたいな間接照明しか点けないので。これじゃ何も見えないよって子どもたちもみんな不思議がっているんですけど、もうそこは『みんな言うな、触れるな』って子どもたちと僕とで話し合って。『また不機嫌になるだけだから』って。だからママが買い物とかでいなくなったときには、『照明を点けろー!』って号令をかけて照明を全部点けて部屋を明るくします。で、ママが帰ってきたら『やべやべ、みんな照明を消せ、間接照明を点けろ!』って(笑)」
急に暗くなるからしばらく見えない。

──家族の中で、そういった奥さまの価値観というか、ルールみたいなものを尊重しているってことですね。奥さんと教育方針について話をしたりすることはありますか?

「そうですね、たとえば長男については、いくつか高校から推薦の話が来ていたんですよ。柔道で。東京の強豪校とか行ってもいいかなと思ってたんですけど、でも本人が佐賀県でやるって決めたんで特にこちらから言うことはなかったんですけど、どうも僕と妻とで話し合っていたことが多少なりとも影響していたみたいで。それというのは、今の僕の仕事のスタンスが、“佐賀県に恩返しをする”というのがあるんですね。佐賀県の歌で売れたこともありますけど、色んな意味で迷惑をかけてきたところもあると思っているので、妻と僕とで『佐賀県に恩返しができるような活動ができるといいね』って話をしていたんです。それもあって佐賀に移住を決断したこともあって」

──実際、はなわさんは2016年から「佐賀市プロモーション大使」にも就任されていますよね。

「そうなんです。長男が中3のとき先生と進路相談をしていて、『僕は佐賀の高校に行きます』って言ったらしいんですね。先生が『なんでだ』って聞いたら、長男は『佐賀県の代表として、全国に出て行きたいんです。佐賀からじゃないと意味がないんです』って答えたっていうんですよ。柔道は、やっぱり強い選手とやったほうが強くなっていくので、東京とかの強豪校に行ったほうがいいんでしょうけど、たぶん長男としては僕ら夫婦の思いというのを感じ取ってくれたんだと思いますね。そんな感じでもちろん夫婦で話し合っていることもありますけど、やっぱり最終的に、はなわ家としては子どもたち自身に決めてほしいというふうに思っています」

はなわさんにとっての家族とは?

──はなわさんにとっての家族とはどういう存在ですか?

「うちの場合は、チームというか、一緒に戦う、仕事でも、今、僕は家族がいないとだめな仕事の仕方もしていますし、そういった意味で、チームメートみたいな気持ちでいます。みんなで共に困難に立ち向かっている感じですね。長男が柔道で頑張っているから俺も仕事を頑張るみたいな。ご存じのように、番組で密着してくれたりするのも、僕の仕事の一つになっています。やっぱり、子どもたちからしたらいろいろとプレッシャーにもなりますし、周りからもいろいろ言われたり、叩かれたりもするので、嫌だと感じることもあると思うんです。嫁も子どもも同じですけど、『家にテレビが入るのは嫌だ』って言ったら僕は仕事を断るつもりでいます。でも、今のところ理解してくれたうえで、逆にそこをプラスに変えてやってくれています。本当にありがたいことに、家族5人全員がサーカス団のような気持ちでやってくれている。だから、僕にとって家族は、チームメートのような存在でもあるんです」

──はなわさんは、3人のお子さんに恵まれ、明るい家庭を築いていらっしゃいますよね。一方で、世の中には“2人目の壁”で悩んでいる方もいます。そういった方々にメッセージをお願いできませんか?

「僕自身、子育てに関わったりする中で、みなさんが抱えている悩みいいますか、苦労というのは十分にわかります。けど、実際に3人の子どもたちとの生活を経験してきた身でいうと、本当に『なんとかなるものだな』とも思っていて。バカボンのパパの口癖で『これでいいのだ』というものがありますけど、まさにそんな感じで。やっぱり子どもができて、家族が増えるということは、これ以上ない幸せです。もちろん、子どもができずに悩んでいる人もたくさんいると思いますし、子どもは1人で十分という方もいるので、何でもかんでも子どもが多いほうがいいと押し付けるつもりはありません。でも、子宝に恵まれるというのは、使命でもあるし、責任もあるし、そこには苦労もあるけど、すごい幸せな楽しい部分がたくさんあるので、ぜひ『なんとかなる』だったり『これでいいのだ』というような精神で、2人目の壁を突破してほしいと思っています。一方では、子どもが増えることはこの日本という国の未来の力にもつながっていくことだとも思うので、みんなで協力して、育てやすい環境をつくっていくことも大事ですよね。今、世の中はそういう流れになっていると思うので、これがもっともっと良い方向に進むといいなと感じています」

今回、インタビューをさせていただいて印象的だったのは、子どもたちや奥さまとのエピソードを話すときの、はなわさんの本当に幸せそうな顔です。はなわさんにとって、家族との時間は本当にかけがえのないものなのだということが、言葉の端々から伝わってきました。はなわさん、今回は貴重なお時間をありがとうございました!