私のコラムでは、今妊娠しようと考えている人や不妊で悩んでいる方、または将来妊娠を考えている皆さんに妊娠に関わる知識を情報として提供してきました。現在、このような知識を世界の人と共有して広めていこうと言う運動がはじまっており、そこではとても大切な情報を提供しています。
今回はその運動のご紹介と、そこで提供されている情報をもとに、改めて妊娠についてお話しします。

以下サイトでご覧になれる妊娠に関する動画やポスターは、英国の生殖学会(British Fertility Society)が提供してくれた動画やポスターです。
これらは「若い人に妊孕性の知識を伝えよう」という意図で作成されており、この動画やポスターを世界の皆さんに伝えたい(グローバルキャンペーン)と考えています。

この動画とポスターには、秋田大学大学院医学系研究科衛生学・公衆衛生学講座准教授の前田理恵先生が日本語訳をつけてくださっているので、英語が苦手な方でも容易に理解することができると思います。
前田先生のお仕事の一つは、不妊に関する社会医学的研究です。
まずは上記のアドレスの動画やポスターをみてください。動画は約4分弱ですので、気楽に見ることができます。

将来、妊娠したいと考えている方に向けた動画の解説

たぶん、ほとんどの方がよく理解できたと思いますが、一応、説明しましょう。
動画では、将来妊娠しようと考えている若いひとたちに、今の時期から妊娠に関わる知識を知っておく必要があること、そしてそのための様々な知識について説明しています。

まずは避妊です。避妊に関しては、妊娠したい時期になったら妊娠できるようにきちんとした避妊法を行うことが大切であるということです。
月経周期においては、妊娠しやすい日や、排卵や月経の起こる仕組みについても説明しています。
さらに、月経周期は周期ごとに長さが変動するので、確実な避妊法が必要であることにも言及しています。

次に妊孕性に影響する因子について説明しています。
まずは、年齢です。年齢が高くなると妊娠しにくくなります。また生活習慣、例えばと食生活、タバコ、アルコールなどは1日ではそれほど影響がなくても、長期間にわたると妊孕性に大きく影響することも説明されています。
そして、10代の時にこのような妊娠に関わる知識の教育を受けることの大切さを説いています。このような教育を受けなかったために妊娠に関わる知識を知らず、いざ妊娠しようとしたときに不妊治療を受けざる負えないことになったり、治療を受けても子どもが授かれない可能性についても言及しています。

妊娠するために知っておくべき9つの知識

さて、次はポスターですが、将来子どもが欲しい人が、今から知っておくべき9つの知識を取り上げています。
とても簡単に記載されており、理解しやすいのでよく読んでください。動画とほぼ同じ内容なので、ご自分の理解のメモとして持っておくのもよいと思います。

ポスター

最初は、女性の持つ卵子の数についてです。
卵子は生後増えることはなく、年齢とともに減っていきます。
特に35歳以上になると急激な低下があり、37歳ではもともと持っていた卵子の90%が失われます。また男性も同様で、精子の質も年齢とともに下がります。

2番目は、射出される精子数と排卵される卵子の数についてです。
精子は1回の射精につき約1億個の精子が射出されます。女性は毎月一個の卵子を排卵するため、生涯では約500個程度を排卵すると言われています。

3番目は食生活です。
健康な状態を保つことが大切で、体重、タバコ、アルコール、カフェインについても記載されています。また、これらの影響は妊娠することに対してだけではなく、生まれてくる子どもにも影響するので、気をつけていきましょう。

4番目は、月経周期において、いつタイミングをとると妊娠しやすいかを説明しています。排卵の5日前から排卵日までです。

5番目は男女の年齢と妊孕力の関係について説明しています。女性が20代であれば月経周期あたり20%の確率で妊娠できますが、40歳を超えると5%まで落ちます。
また、男性も年齢とともに妊娠する能力が落ちますが、特に45歳を超えると相手の方が妊娠しても流産する確率や、生まれた子どもの疾患(特に自閉症など)の確率が高まると言われています。

6番目は、不妊治療を考慮する時期についての説明です。若い方であれば、1年以上タイミングをとっても妊娠しない場合に受診することが目安となりますが、年齢が高いと短い期間で受診することが大切になります。

7番目は、不妊を引き起こすいろいろな病気について説明しています。性感染症やそれ以外の感染症、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症などいろいろあり、気になった方は早めに受診しましょう。

8番目は、体外受精の成績についてです。年齢が若いとかなりの確率で妊娠しますが、加齢とともに確率が低下し、40から44歳では約10% 、45歳ではほぼ0%です。

最後は、皆さんがもし自分が不妊かもしれないと思われたら早めに受診することをお勧めしています。いろいろな不妊治療で妊娠される方も結構いらっしゃいますので、早めに相談されることをお勧めします。

以上がポスターに書かれている内容です。これらの内容は、私が以前に1 more baby 応援団のホームページで書いてきたコラム内容とほぼ同じですが、大切なことは、多くの若い方が、若いうちにこのような知識を知っておいていただきたいことです。

読者の皆さんも、お知り合いの若い方に声をかけて、このサイトにアクセスをし、必要な知識を持っていただくようにしてください。是非、周りの若い方々にお伝えください。

また、英国の生殖学会(British Fertility Society)では、ポスターもできるだけ広く世界に広めるために、ハッシュタグ「#fertilityed」をつけて投稿しようというキャンペーンを行っています。是非、SMSでも拡散してください。