2022年4月から、不妊治療にも保険が使われるように決まりましたね。このことにより、治療方法の値段が全国一律となるわけです。これで、不妊治療も受けやすくなったと感じておられる方も多いのではないでしょうか。若い時ほど妊娠しやすいため、早めに治療を開始できるようになると、これもメリットの一つと考えられます。

一方、患者さん一人一人の不妊原因やその程度は異なるため、その状態に合わせた治療は行いにくくなるのでは?という心配の声もありますが、まずはスタートしてみて、その上で検証していくことが必要かもしれません。
この不妊治療が保険になるまでの道筋はとても大変だったと思います。詳しくは厚生労働省のホームページを参考にしていただくとよいと思います。いろいろなことが検討されたようですね。

その中で皆さんが一番気にされるのが、費用の面だと思います。これについては、このホームページにある、第516回 資料番号:総-1(答申について)(令和4年2月9日)※不妊治療関連部分のみ抜粋をみてくさい。
この内容について、現在わかる範囲で説明してみます。

人工授精の内容と自己負担額

先ず、人工授精についてご説明しましょう。以前は、この治療は自費の治療でした。各不妊クリニックで独自の料金設定がされており、おおよそ10,000円から30,000円の価格設定がされていました。これに診察料なども自費で計算されるため、結構大きな額になりますね。
それが4月からの保険適応によって、1,820点と決められました。「点」という言葉にはなじみがないと思いますが、「1点」10円と考えてください。すなわち人工授精の料金は18,200円ということになります。そして3割の負担ですから、みなさんが支払う額は5,460円となります。
これに薬剤や診察料が加算されますので高くはなりますが、これらも3割負担なので、以前よりは安価になると思います。

抗ミュラー管ホルモン(AMH)検査の内容と自己負担額

次に、以前に卵巣の予備能を推定できると紹介した、抗ミュラー管ホルモン(AMH)についてご説明します。このホルモンの測定は600点、すなわち6,000円に設定されました。この3割負担は1,800円となり、これも以前支払っていた額よりはかなり安価になると思います。
しかし、このホルモンを測定するには条件が付いています。このホルモンを測定できるのは、調節卵巣刺激療法におけるゴナドトロピン投与量の判断を目的として実施した場合と規定されています。ですので、初めて不妊クリニックを受診した際に、不妊の初期検査として卵巣予備能を検査する場合には、保険が使えないことになります。かなり複雑ですね。

体外受精、顕微授精の内容と自己負担額

次に体外受精と顕微授精について説明しましょう。これは手技ごとに細かく分かれています。先ずは採卵術です。採卵術は3,200点です。さらに採卵された卵子の数で加算があります。1個採卵されると2,400点、2~5個だと3,600点、6~9個だと5,500点、10個以上だと7,200点と設定されています。ですので、採卵術で5個採卵できた時は、3,200+3,600=6,800点となり、3割負担は20,400円となります。

体外受精・顕微授精管理料ですが、体外受精は4,200点、顕微授精は1個の場合4,800点、2個から5個までは6,800点、6個から9個までは10,000点、10 個以上は12,800点となっています。よって、体外受精だと42,000円の3割負担で12,600円、顕微授精卵子5個の場合は68,000円の3割負担ですので、20,400円となります。

続いて、受精卵・胚培養管理料ですが、1個の場合は4,500点、2個から5個までの場合は6,000点、6個から9個までの場合は8,400点、10個以上の場合は10,500点です。また、胚盤胞の作成を目的として管理を行った胚の数に応じて、それぞれ1回につき所定の点数に加算します。それぞれの加算点数は、1個の場合は1,500点、2個から5個までの場合は2,000点、6個から9個までの場合は2,500点、10個以上の場合は3,000点です。よって、5個を胚盤胞まで培養する場合は、6,800+2,000=8,800点になり、3割負担の金額は26,400円になります。

次は、胚凍結保存管理料です。保存管理導入時の胚凍結保存管理料は、1個の場合は5,000点、2個から5個までの場合は7,000点、6個から9個までの場合は10,200点、10個以上の場合は13,000点です。そして、胚凍結保存維持管理料として、凍結保存開始1年後から、凍結保存開始日から起算して3年を限度として、1年に1回、胚凍結保存維持管理料3500点を算定します。ですので、5個の胚を凍結保存する場合は21,000円、翌年からの年維持管理料は10,500円となります。このような記載内容からすると、3年以上の凍結保存は保険が使えなくなるということのようですね。

さて、最後に胚移植術ですが、新鮮胚移植の場合は7,500点、凍結・融解胚移植の場合は12,000点と設定されました。ですので、凍結胚を移植した場合は36,000円となります。ただし、該当患者に関しては下記の規定があります。
「当該患者の治療開始日の年齢が40歳未満である場合は、患者1人につき6回に限り、40歳以上43歳未満である場合は、患者1人につき3回に限り算定する(ただし、次の児の妊娠を目的として胚移植を実施した場合には、その治療開始日の年齢が40歳未満である場合は、患者1人につき6回に限り、40歳以上43歳未満である場合は、患者1人につき3回に限り算定する。)。」

ここまでは、不妊治療の中心となる治療方法の値段について説明してきました。これ以外にも、受診料や超音波検査料、ホルモン検査料、薬剤料などがありますが、これらも3割負担になります。

保険が適応外になるケースも!治療を選択する上での注意点

さて、皆さんはそれぞれ状況が異なります。不妊治療が保険適応になったことによって補助金が無くなることを考慮した場合、経済的負担が減るのか、増えるのか?、この点については人それぞれ異なる結果となるかもしれません。また、自治体ごとに新たな独自の補助を考えているところもあるので、これも考慮する必要がありますね。さらに、保険対象とならなかった治療を一緒に行うことも、トータルの治療費に影響します。その治療が先進医療として認められていれば、コアの不妊治療は保険、それ以外の先進医療として認められた治療は自費として、それぞれの費用をプラスして考えればよいことになります。

しかし、注意しなければならないのは、保険対象とならなかった治療が先進医療として認められていない場合は、コアの不妊治療も自費となり、かなり出費が増加します。よって、このことも十分考慮した上で、受ける治療を考えていかなければなりません。一言で保険適応と言ってもこの制度はいろいろ複雑ですので、皆さんもご自分の場合はどうなるか?、よく考えて治療を選択してください。