婦人科の検査の一つである経膣エコー検査。これは、子宮や卵巣などを観察するための基本的な検査です。経腟超音波検査によって子宮の大きさや内膜の厚さ、卵巣の大きさなどをみることができ、子宮がんや卵巣がん、子宮筋腫、子宮内膜症など、さまざまな子宮・卵巣の疾患を調べることができます。検査方法も、開脚することに抵抗がある方や性体験のない方などの場合、お腹の上から行う経腹エコー検査や、肛門から行う経直腸エコー検査もあります。
不妊治療においてはほぼ毎回行うものであり、タイミング法や人工授精を行う際に排卵日を予測したり、体外受精・顕微授精では卵胞の成長状態を調べるために使用されています。

このように基本的な検査であるものの、自治体や企業の健診では実施されていないケースも多く、認知度が低いとも言われており、受診にあたって不安を感じている人も多いようです。
そこで私たち1more Baby応援団は、「経腟エコー(経腟超音波)検査」を詳しく知るために、実際に検査を受ける森下有紀さん(仮名)と不妊治療の専門病院「浅田レディース品川クリニック」と、東尾理子さんが主催する「妊活研究会」からの協力を得て、同行取材を実施しました。有紀さんは現在30代半ばで、不妊治療の一つである体外受精を行う過程で実施する採卵に向けて、エコー検査を受診する予定です。

有紀さんが受けるエコー検査の主な目的は、①採卵に向けて卵子の数を調べること、②卵胞の大きさを測ること、③卵巣などに異常がないことの確認です。そして今回は、採卵前に行う最後のエコー検査です。有紀さんは、採卵に向けてこれまで排卵誘発剤の自己注射を1日1回、10日間行なってきました。
さて、卵巣の状態はどうなっているでしょうか。有紀さんがエコー検査を受ける内診室の中まで、同行させていただきました。

内診室に入ると、そこには内診台とモニターの付いた超音波診断装置、照明付きのワゴンなどが置いてありました。内診台の中央付近がカーテンによって仕切られています。

診察室の様子1

診察室の様子2

部屋にはスタッフが1名いました。有紀さんは、慣れた様子で内診室の端にあるスペースでズボンとショーツを脱ぎ、バスタオルを巻いて内診台へ座りました。

医師が入室ししてきて席に座ると、ゴム手袋を手にはめ始めました。それと同時に、内診台が上昇して有紀さんの上半身が倒れ、開脚姿勢となりました。

倒れた有紀さんの目線の先には、天井に取り付けられた受診者用のモニターがあり、医師が見ているものと同じエコー検査の画面が映し出される仕組みとなっています。
内診台の中央付近からカーテンで仕切られているため、医師と目線はあいません。

天井にあるモニター

プローブの消毒が終わると、医師が膣口からプローブを挿入し、天井に設置されたモニターの映像が動きだしました。映し出された超音波映像から、卵巣内の卵胞が確認できます。ちなみに、卵子は卵胞の中にあり、0.1ミリ程度と非常に小さいため、エコー検査では直接見ることができないそうです。また、卵胞は月経が終わる頃から毎日1.5ミリほど大きくなり、月経開始から約14日で直径20ミリ程度の大きさになるそうです。そして、排卵すると萎んでしまうそうです。また、月経の頃には薄かった子宮内膜は排卵日が近づくほど厚くなり、最終的に8ミリ以上になるそうです。

医師はプローブの角度を変えながら、モニターを見つめます。そして、卵胞がきれいに映し出されました。

検査の様子1

モニター画像

画像を固定して超音波診断装置によって卵胞のサイズを測っていきます。「22×24」と、医師が卵胞のサイズを読み上げると、横にいるスタッフが間違えないように復唱しながら、専用端末に入力していきます。

検査の様子2

最初の検査の時に「7×6」程度だった有紀さんの卵胞は、10日間に渡って腹部に注射(自己注射)した排卵誘発剤の効果で、大きく成長していました。前述した一般的な卵胞サイズと比較すると、非常に大きいことが分かります。

医師はプローブを様々な角度に変えながら、卵巣全体をくまなく検査し、全ての卵胞サイズを測っていきました。

検査の様子3

検査開始からおよそ3分、プローブが抜かれて検査が終わりました。下降した検査台から有紀さんは移動し、着替えを済ませ、内診室を後にしました。

検査の様子3

頻繁に棒(プローブ)の角度を変えていましたが、痛みはないのでしょうか?
検査後の有紀さんに聞いてみました。

「感覚はありますが、痛みはほとんどないんです。」

とのことでした。

エコー検査に痛みはなく、カーテンで仕切られるなど様々な配慮もあることから、不妊治療に限らず、婦人科系の病気が気になる人は、積極的に受けてみてはいかがでしょうか?

東尾理子さんからのメッセージ

私が初めてクリニックに行ったのは、アメリカに留学していた19才のときでした。周りの友人たちがあまりにも当たり前に検診に行っていたので、びっくりしました。初めての私は、すごくドキドキしたのを覚えています。
最初は緊張するかもしれませんが、先生も優しい方が多く、女性の先生にお願いすることも出来ます。
自分を大切にすることのひとつとして、ぜひ[かかりつけ婦人科]を見つけてください。

(撮影協力)
妊活研究会
妊活の正しい知識と最新情報をいつでも学べるコミュニティです。
専門病院の先生方との対談動画や専門家の講座、病院情報や不妊治療の保険適用などなど情報満載です。
東尾理子とのZoomお話会や、オフ会も定期開催!充実した妊活ライフを応援します。

(撮影協力・記事監修)
浅田義正 先生
浅田レディースクリニック院長
医学博士

日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
日本生殖医学会認定生殖医療専門医
1954年愛知県生まれ。名古屋大学医学部卒。同大医学部産婦人科助手などを経て米国で顕微授精の研究に携わり、1995年、名古屋大学医学部附属病院分院にて精巣精子を用いたICSI(卵細胞質内精子注入法)による日本初の妊娠例を報告する。2004年に勝川で開院、2010年には浅田レディース名古屋駅前クリニックを、そして2018年 浅田レディース品川クリニックを開院。
主な著書
『実践 浅田式標準不妊治療学』(協和企画刊)
『不妊治療を考えたら読む本-科学でわかる「妊娠への近道」』(講談社ブルーバックス刊)
『よくわかるAMHハンドブック-女性を診るすべての医師へ』(協和企画刊)