学生時代には陸上選手として全国大会で活躍し、モデルを経て子どもたちに大人気の「スーパー戦隊シリーズ」で俳優デビューを果たし、その後もさまざまな映画やドラマ、バラエティ番組で活躍する中、男泣きする姿でお茶の間を賑わせてくれている照英さん。

2005年に妻・和加子さんと結婚すると、長男(2007年誕生)、長女(2010年誕生)、次女(2016年誕生)の3人の子宝に恵まれ、自身も子育てに参加するパパとして、NHKの育児関連番組のMCを5年間にわたって担当しました。

そんな照英さんですが、実は独身時代は子どもが得意ではなかったのだそうです。「スーパー戦隊シリーズ」に出演していた当時をふり返って次のように話していました。

「実は、僕は子どもがあんまり得意じゃなかったんです。若い頃、ヒーロー戦隊みたいな役をやっていたので、子どもたちから『抱っこしてください!』みたいなことがたくさんあったんですが、あんまり気持ちとして前向きではなかったんです」

でも、どうして照英さんは子どもたちと触れ合うことに、消極的だったのでしょうか? そして、どんなきっかけで子ども大好きなイクメンに変貌を遂げていったのでしょうか? 今回、日本で一番“熱い男”といっても過言ではない照英さんに、子育てについての“熱い思い”を聞いていきます。

実は子ども嫌いだった!?

──20代のころ、実は子どもがあまりお得意ではなかったそうですが、それはどうしてですか?

「当時は、親族の中にも、あまり子どもとか赤ちゃんというのはいなかったものですから、抱く機会とか触れ合う機会が少なかったんです。今思えば、とにかく知識不足だったというか。そんな感じでです。でも、さきほど言ったみたいに仕事上、必要に迫られて、抱っこすることもありますよね。そこで、ぎこちなく抱っこしたりすると、子どもによっては泣いちゃったりするんですよ。ほら、こういう人相ですし、声もでかいってこともあって。そういう経験をしたので、泣かせるくらいだったら、抱かないほうがいいって自分の中で決めつけてしまって、どんどん子どもとの距離が遠くなっていった……みたいな感じです」

──でも、その後NHKの子育て番組を5年間も担当されたり、小学生に絶大な人気を誇る「天才てれびくん」を担当したり、子育てに関する本も出版されたりと、大活躍されてきました。ご自身の中で、20代の頃との心境の変化は感じていますか?

「そうですね。今、僕は長男が10歳、長女が7歳、次女が1歳とちょっとの3人の子どもがいます。妻をいれて5人家族なんですが、やはり1人目の妊娠の影響が大きかったです。とにかく『興味』が生まれたんです。妊娠とか赤ちゃんって、親しい親族にもいなかったので、まさに自分がまったく知らない世界だったんです。それが妻の妊娠によっていきなり目の前にあらわれた。誰しもがそうだと思いますけど、そのギャップが自分の中ではすごく大きくて、『これからどうなるんだろう』『子どもが生まれたらどんな感じになるんだろう』っていうふうに一気に興味が爆発したんです。当然、妻としても初産でしたし、妻を助けたいという気持ちもありました。けど、それ以上に自分がワクワクしていましたね」

子どもが得意じゃなかったからこそ、子育てにハマった

──具体的にはどんな感じだったんでしょうか?

「お腹にいるときから、トイザらスや西松屋、赤ちゃん本舗のようなベビーグッズショップに足繁く通いました。それこそ毎週デートのように妻と一緒に行って、赤ちゃんグッズを揃えて、哺乳瓶はこれがいいかなとか、ちくびのかたちっていろいろあるんだねとか、スリングってなんだとか、いろんなものを全部吟味していきました。そういうのがいちいち面白かったですね」

──そして、満を持して1人目が生まれてきた。

「はい。そういう中で長男が生まれてきた。それまでに蓄えてきたネタが自分の中にいっぱいあって、『あんな気持ちになるかな』『こんな気持になるかな』って。そういうことを言ったり考えたりしていたら、子どもが生まれた後に、NHKさんの『すくすく子育て』という番組の司会という仕事に恵まれて、5年間やらせていただきました。その間、行政の方や病院の先生とか、いろいろな人にきてもらって子育てに関する話を聞いていくと、どっぷりとハマっていく自分がいることに気が付きました。まさかこんな人間になるなんて思ってなかったですね、本当に。なんでもやってみないとわからないものだなって思うし、そのことはパパさんたちに伝えたいという気持ちもすごくあります」

──でも、どうしてそれほどまでに子育てにのめりこんでいったんでしょうか?

「もしかしたら、最初から『好き、好き、好き、好き』って言っている人のほうがハマらないということもあるのかもしれません。なぜなら、本当の『好き』がわかっていないから。そういう人のほうが、理想と現実のギャップがあって、ハマりきれないというか。でも、逆に自分はそうじゃなかった。子どもが得意じゃなかったからこそ、入ってみたら面白くて、面白くて。未知の世界ですから、勉強のしがいもあるということです。『ああやったらどうなるんだろう』『こうしたらどうなるんだろう』って常に考えています。それがとにかく楽しいんですね」

子育てにマニュアルはない

──実際に子育てを始めてみて、どんなことを感じていますか?

「いちばん感じているのは、子育てにマニュアルはないんだなってことです。人がやっている子育てと違う子育てをしている可能性って、誰にでもありますよね。でも、実際に子育てに関わってくる中で思うのは、マニュアルは考えなくていいということです。マニュアルを考えて、窮屈を感じている親はたくさんいると思うんです。でも、子育てでいちばんやっちゃいけないのは、比較すること。隣の芝生は青く見えるじゃないですけど、比較していいことはない。家系も違う、住んでいる家も違う、学校も違う、友だちも違うのに、なんで同じふうに育てないといけないのか、自分の中でまったく理解できません。本当に自由でいいと思う。

もちろん礼儀作法などの人として最低限のこと、人に迷惑をかけるようなことはやっちゃいけないって思いますけど、それは親だけじゃなくて学校でも教えてくれる。親が教られることっていうのは、基本的には自分たち自身が教えられてきたことの中で教えることになります。つまり、親やおじいちゃんおばあちゃんから教わってきたことを子どもにも伝えていくということ。僕はそれでいいと思うんです」

──自分の経験値以上の何かを子どもに教えることはできないということ?

「そう、あくまで自分ができることを教えていく。それで良いと思うし、それ以上のことをやろうとすると、ぜったいに疲れちゃうし、無理がきてしまう。自分が知っている範囲内でやればいいと思う。一方では、それすらやらない人もいます。自分が教えられる範囲のことでも教えない人がいる。できない人はだれもいません。『俺には、私には、子育てはできない』って言う人もいるけど、それはやらないだけであって、子育てはやれば誰にだってできると思うんです。だって誰かと比較しないわけですから。その人なりにやればいいだけだから。そこにできないとかできるとか、そういうことはないのではないかと」

──先ほどの「子育てにマニュアルはない」というのは、すごくいい言葉ですよね。では、照英さん一家の子育ての考え方はいかがですか?

「妻は、母乳だろうとミルクだろうと、特にこだわりはなくて、それは我々2人ともそうですね。でもまあ、幸いなことに母乳が出ているので、自分で母乳で育てればいいなって思っているようですが、別にそこにこだわっていることもなくて。そのあたりは、やれることをやるだけなので、僕から何か意見を言ったこともないですね。あ、ひとつだけありましたね。長男が幼稚園にあがるときに『もう幼稚園だから、そろそろおっぱいはやめたほうがいいんじゃないかな』ってそれだけですね。でも、卒乳については賛否両論で、いろんな意見がありますから、最終的にはそれも妻に任せればいいかなって思うので、それ以上のことは言いませんでしたが。

基本的にはのびのびしていると思います。今、次女が1歳です(取材当初)が、夜泣きは少ないんですけど、やっぱり赤ちゃんがいると、生活のリズムが普段とは変わります。ふと気づくと、常に眠い眠いって状態になっていたりしますよね。だから、そこは改善したほうがいいんじゃないのかって話し合ったことがありました。お互いで協力して休みながらやろうって。

というのも、うちは上の子が2人いるので、うまくバランスを取らないといけないと思っているからです。下の子の面倒でいっぱいいっぱいになると、どうしても上の子が後回しになってしまう。そこは夫婦の中で話し合って、気を配っていこうってしています」

3人の子どもを育てる核となっていること

──照英さん一家は、今お話にもあったようにお子さんが3人いますよね。そもそも3人というのは、決めていたんでしょうか?

「もともと妻が4人兄弟の末っ子、自分が2人兄弟の長男です。ということもあって、子どもは3人欲しかったんです。2人では少し物足りないし、4人だと多いかなって話していて、じゃあ間を取って3人だねってなったんです。だけど、長女ができて3番目にいこうと思っていたらぜんぜんできなくて。夫婦とも年齢が40歳を超えていたこともあったので、なかなか難しいのかなって話していて、じゃあもう諦めてもいいかな、無理してつくらなくてもいいかなって話をしていたら、3人目が一昨年、ポンッとできて」

──よく「子育てに余裕があるので、3人目は特に可愛いと感じる」といいますけど、いかがですか?

「3人目を産んだとき、妻は42歳なので高齢出産ですよね。やっぱり体の負担もあるし、上の子どもの宿題をみたり、弁当もつくったりとか、いろいろ大変な部分も多いと思うんですけど、『かわいいね』『かわいいね』と言っている姿は、第1子と第2子とはぜんぜんちがいますね。確かにどこかに余裕があるのかもしれないです。それに、もう無理かもしれないねって言っていたところに出来たので、余計に愛おしく感じているのもあると思います。最後の赤ちゃんという意識で育てているのかなっていう感じはすごくありますね。あとは、子ども同士でも抱っこの取り合いとかしています。上の子どもたちにとっても、すごくかわいい存在ようで、自分の子どものように思っているみたいです(笑)」

──ただ、その中で末っ子の赤ちゃんにばかり意識がいかないように気をつけているということですね。それは簡単なことではないですよね?

「そこは、3人を育てる核となっているところですね。今、3人目が赤ちゃんで、夢中になっているのはわかりますが、上にも2人いるんだよ、あくまで上の子をしっかり見たうえで、赤ちゃんもお世話するというか、どうしても赤ちゃんにばかり注意を向けがちなので。そういったことで意見をぶつけ合うこともあります。むしろ子どもが生まれてからのほうが喧嘩が多いと思います。喧嘩というと大げさですが、いろんな意見を言い合うようになったと思います。

夫婦ってもともと他人じゃないですか。一つ屋根の下で一緒に暮らしていても、血はつながっていないから、考え方や意見がまったく一緒になるということは難しいと思っています。だから、しっかり向き合って、しっかり話し合うことが大事だと思っていて、そういったときにたまに喧嘩をすることもありますけれど、それは必要なこと。子育てに関して、意見の交換はしないとダメ。『俺はこう思うけど、あなたはどう思う?』ということを徹底的に話し合っていくべき。それを溜め込んでいったら、むしろどこかで破裂すると思うんですね、そのことのほうが怖いです。『あのとき私はこう思ってた。あなたには言わなかったけど』みたいなことのほうが怖い。今、何か問題が起きているのならば、しっかりと会話のキャッチボールをして、喧嘩することもあるかもしれないけれど、きちんと向き合えるような夫婦でいたいなと思っています」

──具体的にはどのように会話のキャッチボールをしているのでしょうか?

「たとえば最近、朝、子どもたちを学校に送り出してから時間があるときに、『赤ちゃんと上の子の扱い方』とかを話したことがありました。そういう時間をなるべく確保するようにしています。でも、やっぱり歳を重ねていくにしたがって、夫婦での会話の量は減っていきますよね。どうしても。結婚12年とか経ちますが、やっぱり結婚当初のほうがウキウキ気分もあるので、会話もありましたよね。今は3人目ができて赤ちゃんがいる生活になったことで、会話が増えている部分もあります。でもやっぱり40歳も半ばになると、だんだん夫婦の会話は落ち着いてくるんだなって感じています。そうした中でも、話すべきことは話すということを意識して行っていて、特に子育てにおいてはきちんと時間を確保して話すということですね」

実は子どもが苦手だったという、今の照英さんの姿からは想像もできないお話がありました。大なり小なり、子どもを持つ親であれば誰もが同じことを感じているのではないでしょうか。つまり、最初から父として、母として一人前だったわけではなく、子どもが生まれ成長する過程とともに、父も母も成長していくということ。照英さんのお話から、そのことをあらためて感じました。後編は、照英さん一家の、より具体的な生活の話、子育ての日々について、お聞きしていきます。