現在、日本では新型コロナウイルスが猛威を振るっており、とても心配な状況になっています。
1more Baby 応援団のコラムの読者もとても心配されておられると思いますので、今回は、妊婦さんと感染症について考えてみたいと思います。

感染症を考えるときに大切なこと

感染症を考えるときに、まず、大切なのは、その感染症に罹患(りかん:病気にかかること)しやすい人がいるのか?ということと、罹患すると重症化しやすい人がいるかということに、着目されます。
一般に免疫機能が弱い高齢者・妊婦・若年者や糖尿病・心不全・呼吸器疾患・透析患者などの基礎疾患を抱えている人やがん治療のために抗がん剤の投与を受けている人などは感染症に罹患しやすく、また、罹患すると重症化しやすいとして、注意が促されています。
特に妊婦は、自分だけでなくおなかの胎児への影響についても考慮しなければならない点がさらに心配になります。

新型コロナウイルス感染による胎児への影響について

しかし今回の中国における、妊婦感染症例の報告では、妊娠後期の新型コロナウイルス感染での胎児への重篤な悪影響は明らかになっていません。
もちろん、今後、生まれた新生児の長期の観察は必要ですし、さらに、妊娠の初期に新型コロナウイルスに罹患した症例の出生児の状態については未知といえますので、この新型コロナウイルスに罹患しないように気を付けていくことは大切になります。

現時点における一般的な感染症と新型コロナウイルスの違い

いままでも、一般のコロナウイルスに罹患し、すなわちいわゆる風邪にかかることはよくありました。
しかし、一般のコロナウイルス感染では新型コロナウイルスのように重症になることはなく、数日のうちに、良くなっています。
新型コロナウイルスが恐れられているのは、治療薬が開発されていないことばかりでなく、インフルエンザに比較すると致死率が高く、また、症状がない時期でも他人に感染させるため感染力が高いとされるところにあります。

今回の新型コロナウイルスを含め、人類は遠い昔より、いろいろな感染症と戦ってきました。
昔は現在のように知識や技術がないため、多くの犠牲を払ってこれらの感染症に打ち勝ってきました。
でも最近は、毎年流行するインフルエンザのように予防ワクチンやタミフルなどの治療薬が開発され、多くの方がインフルエンザに感染せずに済んでいますし、また罹患しても軽症で済むことが多くなっています。
 
しかし、新型コロナウイルスは新しい感染症なので、まだ、これに対する予防ワクチンや治療薬がありません。
現在、早急にこれらの予防薬や治療薬の開発に着手されていますが、私たちの手に届くのはまだまだ先のことです。
そこで現在期待される方法は、他の病気の治療のためにすでに開発された薬の中でこの新型コロナウイルスにも効く薬がないか検討する方法です。
この方法だと開発時間が短くて済み、1~2か月ぐらいの臨床治験のあと、その薬が新型コロナウイルスに効果があると認められれば、その薬の適応が拡大され、早急に皆さんのもとに届く可能性もあります。

基本的な予防対策と社会が取るべき行動について

それ以外の予防対策といえば、昔ながらの公衆衛生学的な予防になります。すなわち、罹患しないようすることです。
マスクの着用、手洗い、うがいは基本となります。また、この新型コロナウイルスは、感染していても症状が現れない方、あるいは、症状が軽い人が一定程度おられることが、大きな問題となっています。
罹患された本人にとっては症状が軽いのはありがたいことでが、症状が無い、または、軽いため、仕事やレジャーに出かけて、他の多くの人と接触し、知らず知らずのうちに新型コロナウイルスを伝染させてしまう可能性が高いことが問題です。

特にうつされた方が高齢者や基礎疾患を持っている人では重症化すると言われており大きな問題となっています。
ですので、他人にうつさないために、症状が無い方は、罹患しているか、していないか判然としないので、①密閉空間にいない、②大勢で密集しない、③密接して会話しないという行動規範はとても重要になります。
ただ、罹患していない人、または罹患していても症状が無い人が、このような行動規範を長く続けるのはなかなか難しい面もあることは事実です。

このために、新型コロナウイルスがoutbreak(突発的に発生)しそうな現状では、少しでも風邪症状がある方であれば、新型コロナウイルスのPCR検査や抗体検査の対象者として容易に検査を受けることができる社会体制を整備し、不顕性感染者本人に感染者であることを自覚させ、他の人にうつさない行動をとることを気付かせることが大切です。
自分が感染しているがまだ症状が表れていない不顕性感染者だと知れば、日本人の国民性からして、知った人全員がこの行動をとるものと思っています。
さらに、これら不顕性感染の患者は多数存在すると推測されるので、この方々を病院に収容すると病院が機能マヒに陥ります。
よって、病院とは異なる隔離施設に隔離する制度を構築することも必要です。このようにすれば、治療の必要な重症者は、病院に隔離し治療も受けることができます。

感染症に対する備え方のまとめ

感染症に対する備え方について、最後にまとめてみましょう。
すべての感染症に対して言えることですが、まず、予防注射があれば、必ず受けておくことです。
これはインフルエンザに限らず、風疹や子宮がんの予防ワクチンにおいても同様です。
そのうえで、されに、感染の機会をなるべく避ける行動をとることです。接触感染、飛沫感染、空気感染やエアゾール感染など、いろいろな感染の様式があるので、それに合った対策や回避行動:マスク、手洗い、うがい、部屋の換気、密閉空間に行かない、大勢で密集しない、密接して会話しない、などに心がけることです。
これらの対策や回避行動のおかげで、この冬のインフルエンザ感染数は劇的に減りました。
新型コロナウイルスはインフルエンザに比較し一段と感染しやすいので、徹底的な対策や回避行動がさらに必要と思われます。
また、新型コロナウイルスの予防策としては、常日ごろから健康に心がけ、糖尿病や高血圧などの病気にならないようにすることも大切です。

現在、新型コロナウイルスの脅威の中にいますが、罹患しないために皆さんができることがたくさんありますので、是非いろいろな予防法を行っていただき、罹患されないことを切に願っています。