みなさんが思い描く「家族のカタチ」とはどんなものでしょうか?
きっとそれぞれが思い描く、まったく違った家族のカタチがあることだと思います。
でも、いったいどれだけの人が思い描いた家族のカタチを叶えることができているでしょうか。
とりわけ、「理想の子どもの人数」という観点で見ると、いっそうその疑問は膨らみます。

胸の内で抱いていたはずの「家族のカタチ」や「理想の子どもの人数」を、やむを得ない理由から断念している人が少なくないようなのです。
そこで私たちは、2人以上子どもを育てている家庭の特徴や出産・育児、生活の考え方をよく調べてみることにしました。

このシリーズでは、私たちが調べたそれぞれの「家族のカタチ」について、シリーズでご紹介していきます。
第5回目となる今回ご紹介するのは、「「子育てしやすい環境づくりは仲間集めから」について。

夫すらも頼れない!? 地縁のない街で……

伊藤家は妻の雅子さん(仮名・38歳)、夫(39歳)、長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。雅子さんは産休中。夫は会社員として働いています。
夫の会社は海外にも拠点があるため、1年のうち3分の1から半分は出張で海外へ赴くほど。「ほぼ母子家庭状態」になってしまうこともあると雅子さんは話します。

「お互いの親も近くにいないので、頼れる人はほかにいません。なんとか風邪を引かせないようにとヒヤヒヤしながら、娘を保育園に連れていき、仕事場に通っていました」

2人はつき合いはじめて1年後には結婚。夫の会社の近くにマイホームを購入し、ほどなくして長女の誕生と、順調に結婚生活を営んできましたが、2人目を決意することには躊躇があったと振り返ります。

「もしつわりがひどくて体調が悪くても、私が長女の面倒をみなくてはなりません。それに2人目を産んだとしても、39歳までにはなんとか仕事復帰しないと、ブランクが空いて転職も難しくなってくるので、正直なところ厳しいかな……と考えていたんです」

けれども夫と「2人目は考えないようにしよう」と話し合った直後、長男の妊娠が判明したのだそう。

「本心では2人目はほしかったんです。それに周りで2人以上の子どもを育てているお母さん方がみなさん物腰も柔らかく、落ち着いていらっしゃって……もしかしたらなんとかなるのかもしれないな、と思えたんです」

自ら代表として子育てサークルを立ち上げ

2人目を後押ししたのには、もうひとつ大きな要因がありました。

「地縁も何もないところに引っ越してきたので仲間がほしいと思い、同じマンションに住む3人の有志を中心に子育てサークルを立ち上げたんです。近くの商店街を1軒1軒回って、“ 仲間募集中” のポスターを貼らせてもらったりして徐々に人が集まっていって……今では350名を超える方々が登録しています」

イベントで交流したり、洋服を交換したり、友人同士で子どもを預け合ったり……。「親や家族以外でも頼れる」ような信頼し合える仲間とのつながりが、雅子さんのみならず多くのママたちの支えとなっています。

「いろんなところに声をかけたら、想像以上に協力してくださる方がいました。地元の農園さんが収穫体験をさせてくれたり、娘が通っている保育園の方に講師をお願いして英語サークルをやったり……地域ぐるみで子どもを育てていくことで、街を活性化していけたらと思うんです」

今ではサークルの代表を務める雅子さん。サークルをNPO 法人化するカタチで、仕事に復帰しようとしています。

「はじめは何もできなかった夫も、子どもの寝かしつけや歯みがき、トイレも自らすすんでやってくれるようになりました。お互い親として、少しずつ成長していってるんですね」

『なぜ、あの家族は二人目の壁を乗り越えられたのか?』
ママ・パパ1045人に聞いた本当のコト

発行: 株式会社プレジデント社
著者: 秋山 開(公益財団法人1more Baby 応援団)
三輪慎一郎
藤平達之
定価:本体1,350円+税

書籍の詳細を見る