4人に1人ともいわれる帝王切開での出産。仮に第一子で帝王切開となった場合、一般的には様々なリスクを考慮し、第二子以降も帝王切開による出産が推奨されることが多いようです。それに加え、出産年齢の高齢化や医療技術の進歩など様々な要因から、帝王切開による出産の割合は増えているとされています。

そうした状況の一方で、実際にどんな体験をしたのか、どんな思いを抱いていたのかについては、個人的な話であることからなかなか耳にする機会は少ないものです。

そこで今回は、経膣分娩の予定だった第一子を急きょ帝王切開(緊急帝王切開)で出産し、第二子を神奈川県大和市にある愛育病院にて選択的(予定)帝王切開で出産された祥子さん(仮)のお話を紹介していきます。

破水から出産まで51時間。第一子が緊急帝王切開に

──最初に、2人目の妊娠・出産を決めた背景や理由からお聞きしてもよろしいでしょうか。

「私自身、兄がいるのですが、きょうだいがいて良かったなという思いがあることが大きいですね。夫も3人きょうだいだったこともあって、結婚当初から子どもは2人か3人がいいよねっていう話をしていました」

──そうした展望がある中で第一子を妊娠され、帝王切開で出産されたということですが、どういったご状況だったのでしょうか。

「もともと通常の経膣分娩を予定で。出産予定日の少し前に破水したので、夫の運転で病院に行きました。そのまま2日間にわたって陣痛に耐えたんですが、最終的には回旋異常になって、緊急帝王切開になりました」

──2日間というのは大変でしたね。

「破水してから帝王切開で出てくるまで、51時間かかったみたいです。本当にもう大変でしたね。陣痛が2分おきになって、そのままの状態で一晩を過ごしましたから、とにかく必死に耐えていました。もちろん眠れないし、食事もできないし。ただ、食事ができないのは、結果的に麻酔を打つのには都合がよかったみたいです」
──手術自体はスムーズだったんですか?

「そうですね。基本的に麻酔は下半身だけなので意識はあって、先生たちと会話もできるんですよね。で、お腹を切るときに少し痛みを感じたので、〝先生、ちょっと痛いです〟と言ったら、〝それなら大丈夫〟って返事がきて。なんか、そのときにはもうすでにお腹を切っていたみたいです。〝麻酔が効いてなかったらちょっとどころじゃない〟ということでしたね」

計画分娩に感じたメリットは?

──その後、2人目を出産されるわけですが、このときに産む病院を変えたそうですね。なにか理由があったのでしょうか。

「2人目もすぐに欲しかったので、排卵が再開しているのかどうかを診てもらうことがきっかけで病院を変えました。それから1人目のときの陣痛が本当にきつくて、無痛分娩にしなかったことを悔やんだので、そこの病院が無痛分娩を推奨しているところもポイントとなりました」

──1人目の経験もあって、出産に対する恐怖心みたいなものがあったということですか。

「そうですね。実際には2人目も帝王切開での出産になるのですが、私のまわりには最初から無痛分娩を選ぶ人も多くて……」

──なんとなく安心して出産できそうだな、と。

「そうですね」

──2人目は予定帝王切開ということで、無痛ではないものの計画的な分娩となったと思います。そのあたりで感じた違いみたいなものはありますか?

「あらかじめ日程が決まっていたので、心の準備はしやすかったです。上の子を両親に見てもらうこともできたり、夫の育休取得の準備など予定を立てたりするのもスムーズにいきました」

──1人目は緊急で帝王切開、2人目は計画的な帝王切開だったということですが、その意味での相違はありましたか?

「2人目のときは、陣痛での消耗分がなかった分、産後の肥立ちという意味で、回復は早かったと思います。もちろんお腹の傷という意味では同じで、非常に痛かったのですが、少しくらいは上の子を構う余裕がありました」

──手術自体に違いを感じた点はありますか?

「あまりなかったかなと思います。自分自身で、お腹の中のことまではわかりませんが」

──覚えている範囲で結構なのですが、手術後はどのような過ごし方をされたのでしょうか。

「2人目のときですが、手術自体は50分くらいで終わりました。そのまま2時間くらい手術室で様子を見たあとに、ナースステーションに隣接したリカバリールームに担架のまま運ばれて、一晩を過ごしました。次の日の朝に、先生が傷口を見てくれて、問題がなかったので、〝そのまま歩いて病室まで戻ってください〟と。早く動くことが大切みたいでしたね」

帝王切開の傷跡を見ると、「少し悲しくなる」理由

──生まれた赤ちゃんとはいつ会えましたか?

「そのリカバリールームに連れてきてもらって、初めて抱っこしたのかな。手術が終わってから2〜3時間後だったと思います。1人目のときはコロナが出てきたばかりだったので、とりあえず24時間は保育器のなかで様子をみてから、でしたね」

──2人目のとき、旦那さんはどこまで立ち会えたのでしょうか。

「帝王切開手術の間は別室で待機していて、もちろん立ち会えていないんですが、リカバリールームに赤ちゃんを連れてきてもらったときには、夫も入らせてもらっていました。そこで2時間くらいだったと思いますが、3人で過ごしたのを覚えています」

──2人目のときですが、手術の前は食事制限があるんですか?

「前日の夜9時以降は水だけ飲んでよくて、当日の朝6時からは、一切何も口にしないようにということでした。手術自体が13時だったので7時間ほど飲まず食わずで過ごしましたが、水分補給のための点滴はしていたので、特に問題は感じませんでした」

──帝王切開の傷の痛みはいかがでしたか?

「麻酔の効いている間は痛くないのですが、翌日から麻酔を抜いて、痛み止めだけで生活をするので、そこからはもう激痛でした。入院は6日間だったんですが、その6日間は座薬の痛み止めなしでは過ごせないくらいでした。痛み止めが切れてくると、頭がおかしくなりそうなくらい痛かったです」

──帝王切開の傷跡を見ると少し悲しい気持ちになる、というお話を事前アンケートに書かれていましたよね。

「お腹を切るときに、横向きに切ったほうが傷は目立たないみたいで、その意味で最近の帝王切開では横が多いらしいんです。ただ、緊急性が高かったり、何かしらのリスクがあったりすると、より安全な縦が選ばれるそうです。一人目の時は緊急帝王切開だったものの、一刻を争うほどの状態ではなかったので、縦か横かを選べたんです。ただ、帝王切開の知識が何もなかった私は、安全なほうがいいと思って、縦でと安易に決めてしまったんです。今にしてみてば、横にすればよかったと後悔しています」

──そのときのお医者さんはどんな説明をされたんですか?

「〝横のほうが目立たないけど、縦のほうがより安全だと言われています〟みたいな感じでした。知識がない状態でそういうふうに言われたら、縦と答えざるをえないですよね。先ほども言いましたが、2人目は別の病院で産んでいるのですが、そっちの先生に聞いたら、横でもそこまで大きな差はないと言われて、やっぱり横にしておけばよかったな、と」

──つまり、悲しい気持ちというのは、傷跡が目立つという意味で、ですね。

「おへその2〜3センチ下くらいから下腹部まで15センチ程度の傷があるんですが、やっぱり結構、なんていうか……ただ線が入っているだけというよりは、皮膚の引きつりみたいなものもあって、目立ちますね」

──手術の跡というのは、回数を重ねると大きくなるんですか?

「実は、傷跡は2人目の後で小さくなりました。切ったところはミミズ腫れみたいに肥厚して赤くなるんですが、そこの腫れた部分の皮膚を切り取ったうえで縫い合わせるんですね。1人目のときはけっこう傷が大きく開いてしまっていたので、そこを2回目のときのお医者さんが綺麗にしてくれた感じです。もちろんそれでも目立ちますが、以前よりはマシになりましたね」

第二子の出産後は比較的心身ともに安定していた

──反復帝王切開を含め、これから妊娠・出産を検討している人に、なにかお伝えするならば、どんなことがありますか?

「緊急帝王切開に比べて、反復帝王切開は、ある程度気持ちに余裕をもって臨めると思います。ある意味、分娩ってどんな形であっても何が起きるのかわからないじゃないですか。もちろん術後の痛みなどはありますが、〝何が起きるのかわからない〟という類の心配はないという意味で、安心感はあるかもしれません」

──〝何が起きるのかわからない〟ということですが、祥子さんご自身は具体的にどんな心配がありましたか?

「妊娠中は漠然とずっと不安が伴っていましたし、特に臨月に入ってからはいつ生まれてくるのか、どれくらいの時間で産むことができるのか、陣痛はいつまで続くのか、どれほどの痛みなのだろうか、といったところでしょうか。そういう漠然とした不安は予定帝王切開のときにはなくて、医療的に赤ちゃんを取り出してもらえるという安心感みたいなものはむしろ感じていました」

──予定帝王切開に関して、家族のお気持ちはいかがでしたか?

「上の子(1人目)はまだ小さかったんで、どこまで理解しているのかはわからないんですけど、私が入院する前から計画的にパパだけと一緒に寝る練習をするといった準備ができました。夫も私の両親も、あらかじめ休みを取るなど予定を合わせることができたので、その意味でもスムーズだったと思います」

──手術の日程が決まったのはいつ頃でしたか。

「35週目でした。検診の結果を見ながら、早産の傾向がなければ38週くらいまで待つのが一般的だと思いますが、私も38週で産みました」

──産後は心のバランスが崩れることもあると思います。そのあたりはいかがでしたか?

「1人目のときは緊急帝王切開ということもあって、ショックと体力の消耗で心身ともにかなり落ち込むこともありました。行政のサポートで、保健師さんも頻繁に訪ねてきてくれて、なんとか乗り越えましたが……。一方で2人目のときは、ある意味どうなるのかがイメージできていたので、かなり落ち着いた状態で過ごすことができたと思います」

──先ほど2人目のときは出産前から不安が少なかったとお話しされていましたが、そのあたりも関係していそうですか? もちろん、術後の激痛というところへの恐怖心はあるんでしょうけれども。

「そうですね。わかって進めていくというところは、だいぶ精神的に安定していると思います」

──ちなみに、いま2人のお子さんがいらっしゃって、3人目も考えの中におありなのでしょうか?

「できればほしいかなと。できれば」

──それはなぜですか?

「夫が3人きょうだいということ。あと、私の兄にも子どもが3人いて、なんか3人だとすごく楽しそうなんですよね。2人と3人ではきょうだいの関係性が全然違っているように感じられて。もちろん妊娠できるかわからないので、絶対にほしいという強いこだわりはありませんが、授かることができたらいいなとは思います」

──最後の質問になりますが、計画分娩には帝王切開だけでなく、無痛分娩という選択肢もあります。仮に出産前に戻れるとして、自分自身に勧めたいのは自然分娩ですか? 計画分娩ですか?

「私の場合は、自然分娩にすごいこだわりがあるわけではないので、そうですね、計画的な無痛分娩を勧めるかなと思います」

──本日はどうもありがとうございました。

今回は、あまり経験談を聞く機会がない、反復帝王切開をご経験された祥子さんのお話を紹介しました。もちろんこれは一個人のご意見、感想ですが、参考にしていただければ嬉しいです。

取材にご協力をいただいた『医療法人愛育会 愛育病院」
https://www.aiiku-hos.or.jp