不妊治療をはじめるときの検査である「卵管造影検査」。この検査は、精子と卵子が出会う卵管の通過性や、子宮の形を調べる検査です。不妊治療の中では基本的な検査であるものの、卵管が通ってないと自然妊娠は不可能なため、自然妊娠ができるか、できないかを調べるためのとても大切な検査です。
しかし、「気を失いそうになるほど痛い!」という感想がネット上を駆け巡っており、このことが不妊治療に取り組む一つのハードルになっているとも指摘されています。

そこで私たち1more Baby応援団は、「卵管造影検査」を詳しく知るため、実際に検査を受ける森下有紀さん(仮名)と不妊治療の専門病院「浅田レディース品川クリニック」と、東尾理子さんが主催する「妊活研究会」からの協力を得て、同行取材を実施しました。有紀さんは現在30代半ばで、出産経験はなく、不妊治療も未経験。当然、卵管造影検査も初めてです。

──これから「痛い」と噂される卵管造影検査ですが、不安はありますか?

「卵管造影検査は、生理の一番重いときと同じような痛みが続くと聞いていました。こちらの病院の先生からは『痛くないよ』と聞かされていますが、本当に痛くないのか不安です。もちろん、卵管に問題があるのかどうかも心配です」

検査当日、有紀さんが受付を済ませ、待合室へ。病院から聞かされていた検査当日の主な持ち物と注意事項とは、「①軽い出血があるため、昼用のナプキン1枚を持ってくること」「②顔色の確認をするので、チークや口紅はしないこと」「③検査前の数時間は、食事や飲水は控える。朝ごはんは低血糖にならないよう摂取してよいが軽めにすること」の3つでした。

待つこと約10分。有紀さんのスマートフォンにインストール済みのクリニック専用アプリを通じて呼び出しがあり、内診室の前へ移動しました。

再びアプリに連絡があり、内診室に入室。
部屋には内診台と照明付きのワゴンなどが置いてあり、部屋の真ん中あたりでカーテンによって仕切られています。

有紀さんは看護師の案内を受け、内診室の端にあるスペースでショーツを脱ぎ、バスタオルを巻いて内診台へ座りました。しばらくすると、検査を担当される院長の浅田先生(以下、先生)が入室してきて準備を開始。と同時に、内診台が上昇して有紀さんの上半身が倒れました。

カーテンで仕切られているため、先生と目線は合わないようになっています。カーテンの向こう側で何が行われているのか、患者からはわからない状態です。ただ、仰向けになった有紀さんの目線の先には、天井に取り付けられた受診者用のモニターがあり、先生が見ているものと同じエコー検査の画面を見れる仕組みとなっています。

準備が終わると、先生が膣口からエコーを入れ、天井に設置されたモニターの映像が動きだしました。映像はエコーの動きと共に変わり、正直何が映っているのかよくわかりません。およそ1分間の検査が終わり、エコーが抜かれました。この検査の目的を先生に伺うと、「子宮は、“前屈”“後屈”といって子宮頚部と子宮体部の曲がり具合が人それぞれ特徴があり、子宮頚部を見ただけでは詳細が分かりません。そのため、この検査によってどのような具合に、どの位までカテーテルを入れることができるのか等を判断し、子宮の形のイメージを捉えます。また、子宮筋腫や子宮内膜ポリープがあることがエコー検査でわかる場合もあります。」とのことでした。

続いて、先生が膣の内部を見るための器具であるクスコ(膣鏡)を使って膣口を広げ、消毒液をしみこませた綿球で消毒をします。そして、膣口へカテーテル(医療用の柔らかい管)をセットし、クスコを外して造影剤をカテーテルに装着しました。

カテーテルに造影剤を装着(これは再現画像です)

続いて、先生がエコーをカテーテルの下側から入れると、看護師が先生の横でエコー用の造影剤の入ったシリンジ(プラスチックの注射器)を握りました。先生から看護師へ「少しずつ、ゆっくり入れていってください」という指示がありました。先生がエコーを動かしながらモニターを確認し、看護師が造影剤を流し込んでいくという役割分担です。

モニターの映像をよく見ていると、白く映る液体が体内を通っているのが確認できました。同時に、「今、卵管を通っているところです」と先生が有紀さんへ説明をしました。

続いて、左右の卵管に液体が流れる映像が見えました。「右のほうが良く流れています」と再び先生からの説明がありました。左右によって流れ方が違うことがあるみたいです。結果的には両方とも問題なく流れているとのことでた。


【動画】流れる造影剤が映るモニター画面

先生が再びクスコを膣口にあてがい、そこに小さい容器に入った消毒液をジャバジャバと流し、綿球を使って消毒を行いました。先生から「カテーテルを入れたときに粘膜から少しだけ出血していますが、大丈夫です」と説明がありました。

検査がはじまってからおよそ5分、内診台がゆっくりと下降し、検査は終了しました。

検査が終わった有紀さんに、改めてインタビューをしました。

──心配していた痛みはどうでしたか?

まったく痛くありませんでした。というよりも、基本的に“無感覚”でした。事前に考えていた自分の心配は大きく外れました。もちろん、クスコの少しひんやりとした感じやエコーの感触はありました。

──少し出血したようですが、違和感はありませんか?

はい、検査後もまったく問題なく立てましたし、2~3日間は少量の出血が続くかもしれないそうですが、今はそれも気になりません。

──「卵管造影検査」で何か不快に感じたことはありましたか?

クスコは金属なので、入れるときに若干の痛さや違和感はありました。造影剤は入っている感覚が若干あるくらいでした。全体的には、自分で意識しないと何も感じませんでした。

有紀さんは検査後、別室で先生からの説明を受け、帰り際に感染症予防の観点からと、1日分の抗生剤を処方されました。膣に入れた少量の造影剤は1日程度で排出されると説明がありましたが、後日、有紀さんに聞いたところ、特段ショーツにつくということもなかったようです。

検査費用は、約15,000円だったとのこと。色々な情報がネットに溢れていて、実際に痛い卵管造影検査もあるのだろうが、5分程度の検査時間、そして痛みを伴わない今回のような検査であれば、患者さんの負担は大きくはないのではないかと筆者は感じました。

浅田レディースクリニック 浅田院長に聞く

Q:卵管造影検査は「痛い」という話もありますが、有紀さんからは「痛くなかった」と聞きました。なぜでしょうか?

A:レントゲンを使用した検査は強い痛みを伴います。今回の検査のやり方は、レントゲンは使用せず、エコーで確認しました。エコーでの検査は、卵管閉塞や狭窄さえなければ、検査に伴う痛みもあまりありません。
ただ、エコーで卵管造影検査を実施している病院は少なく、全体の1割程度だといわれています。超音波の技術が進んでいるため、レントゲンを撮らなくても子宮の形は分かるようになってきています。

Q:卵管造影検査の手順を教えてください。

A:卵管造影検査は、先生と看護師の2人体制で行います。看護師が造影剤を先生の指示に従って注入し、先生がエコーの機械を持ちながら、モニターの画像を確認し、卵管が通っているかどうかを確認します。注入する造影剤は、10cc程度です。卵管の内径は約1mm程度なので、造影剤は少量です。

Q : 造影剤には油性と水性があると聞きましたが、浅田先生はどちらを使用していますか?

A : 私は水性を使用しています。油性の場合は長期間にわたって泡が粒になって体内に残る場合もあり、数年度にレントゲンを撮ってもまだ写っているなんてこともあります。昔は油性のほうが検査の後の妊娠率が上がるといわれて使用している人も多かったのですが、実際のエビデンスは乏しく、現在では油性を使用している人はほとんどいません。

Q : 卵管が癒着してしまう原因を教えてください。

卵管が癒着する主な原因は卵管の炎症である卵管炎だと考えられています。
卵管炎の原因としては腹膜炎や盲腸炎など、お腹の中全体の炎症で引き起こすこともあれば、クラミジア感染症による卵管炎も多いのではないか、と言われています。また、子宮内膜症も炎症を起こしますが、子宮内膜症で卵管がつまるだけではなく、子宮と周りの臓器が癒着することも不妊治療では多く見られるケースです。

クラミジア感染症は特に自覚症状がなくても知らない間に感染していることもあります。また、クラミジアの抗体は、卵管を攻撃する抗体だという報告もありますので、当院では不妊治療を開始する前にクラミジアの抗体検査を行っています。クラミジア感染症は“sexually transmitted disease”と言われるように性交渉を介して感染することがありますので性交渉時にコンドームを使用することが予防策になるかもしれません。

子宮内膜症は、女性の現代病と言われている病気で、若いうちに妊娠出産をせずに月経が繰り返されると月経血の細胞が卵管を通じて腹腔内に入り、腹膜やあるいは子宮の表面や卵管周りに月経血中の細胞が生存し、生着して起こる疾患です。予防策としては、月経の回数をなるべく少なくすることだと言われています。子宮内膜症の症状がひどい場合は、低用量のピルを若いうちから服用することも予防策のひとつになります。

Q:卵管が通っていなかった場合、どのようなステップに進みますか?

A:閉塞や癒着を解除する卵管鏡下卵管形成術(FT)を行うか、ステップアップして体外受精へと進みます。ただ、卵管を通すFTは物理的に有効性がありそうですが、それが有効だというデータはほとんどありません。
また、35歳を過ぎた方の場合、卵管を通して様子を見るよりも、少しでも若いうちに体外受精に進んだほうが良いと思います。なぜなら、炎症などで閉塞している場合、無理にそこを剥がしたとしても、元には戻るわけではなく、再度癒着するからです。
精子は子宮から卵管へ行って、受精卵は卵管の膨大部の端っこから子宮に戻ってきます。その運動は卵管上皮の表面にある繊毛という細かい毛みたいなものが運んでくるといわれており、炎症があって卵管が詰まっているところを無理矢理通しても、繊毛がなかったら卵が運ばれないため、子宮外妊娠の原因にもなります。

Q : 妊活で結果をだすために、定期検査を受ける、妊活前に卵管造影検査を受けるなど、何かアドバイスがあれば教えてください。

一般の方が妊活を考えた時、卵管造影検査を行わなければならないかというと、そうは思いません。なぜなら、卵管が詰まってなかなか妊娠ができない人というのは非常に少ないからです。
子宮内膜症の場合や癒着があっても、子宮内膜症の軽症の方と重症の方では同じくらい、妊娠しにくいという結果が出ています。卵管造影検査を行えば癒着の程度等は分かりますが、検査をしたからといって「妊娠しないということが分かる検査」ではない、と捉えるべきだと思います。
妊活を考えたら、普通にタイミング法などを行い一定期間、妊娠できなければ専門クリニック等で検査を受けることが正しい判断だと思います。

浅田院長

卵管造影検査で使用するもの

①クスコ膣鏡、セッシ ②カテーテル ③造影剤(AとBを使用直前に混ぜる)

卵管造影検査の手順

子宮内に挿入したチューブから子宮内腔に造影剤(界面活性剤)を注入し、経腟超音波で卵管内を通過するかどうかを確認します。

①クスコで膣の入り口を広げ、イソジン綿球で消毒する

②カテーテルをセットする。

③カテーテルに造影剤を装着し、エコーを挿入

④エコーで見ながら造影剤を注入し、卵管に造影剤が流れているかを検査する

協力:浅田レディスク品川リニック