国立成育医療研究センター臨床研究員
梅ヶ丘産婦人科 ARTセンター長
浅田レディースクリニック顧問
神戸元町夢クリニック顧問
近畿大学先端技術総合研究所客員教授
ウイメンズヘルスリテラシー協会理事
公益財団法人1more Baby応援団 理事
専門は生殖医学、不妊治療。日本産婦人科学会・倫理委員会・登録調査小委員会委員長。長年、不妊治療の現場に携わっていく中で、初診される患者の年齢がどんどん上がってくることに危機感を抱き、大学などで加齢による妊娠力の低下や、高齢出産のリスクについての啓発活動を始める。
著書
「妊活バイブル」(共著・講談社)
「『産む』と『働く』の教科書」(共著・講談社)
体外受精の年齢別の妊娠率は?ライフプランを考える時に知っておきたいこと
齊藤英和
2021年01月07日
不妊治療をしている私にとって、年の瀬が押し迫ると気になるのが、今年の出生数や生殖補助医療の現状です。不妊治療が国の少子化対策に大いに寄与できるとは思いませんが、子どもを持ちたいと望んでいる方に一人でも多く、挙児が叶うようにと思って治療しています。
一方、一人でも多くの方が、ご自分の妊孕力が在るうちに、不妊治療をせずに自然に妊娠されるよう願っており、このコラムを通じていろいろな情報を発信してきています。
日本は世界有数の子宮頚がん発生国に!?~自分や子どものためにも知っておきたいHPVワクチンの接種について~
齊藤英和
2020年12月02日
現在、新型コロナウイルスの予防ワクチンの開発が大詰めとなり、皆さんは、早く予防接種を受けることができるようになることを期待していると思います。
今から約100年前に流行したスペイン風邪(インフルエンザA型の亜型)が流行した時も、全世界中がパニックになりましたが、当時はワクチンを開発する技術がないため、公衆学的な予防である接触をせず、隔離など3密回避が唯一取りえる予防法でした。
しかし、現在我々は、幸いなことにワクチンという方法を利用することができます。コロナ感染予防のためには、ワクチンはとても有効な方法です。ですので、早くワクチンの効果・安全性が確認され、使用できるようになってほしいですね。
ワクチンに関しては、皆さんもこれまで、一般のインフルエンザワクチンや風疹ワクチン、麻疹ワクチンなど、ワクチンの多大な恩恵を受けてきました。今回、話題に取り上げるのは、ワクチンの中でも子宮頸がん予防のためのHPVワクチンです。
今年、子宮頸がんの予防のためのHPVワクチン接種に多くの進展があったので、今回年末のコラムで取り上げました。
1 more Baby 応援団の読者の皆さんも考えてみてください。
不妊治療の専門医が考える、理想の子どもの人数を得るために必要なこと ー1 more baby を生むためにー
齊藤英和
2020年10月27日
以前のコラム(2018.4.27)で、持ちたい子どもの数と自然の方法や体外受精で妊活を始める時期についてお話たことがありました。
そのコラムでは、ヨーロッパの生殖医学の専門雑誌Human Reproduction に掲載された論文(Human Reprod, 30 (9), 2215-2224,2015)を用いて、子ども1人、2人、または3人持つには、いつから妊活を始めたらよいかお話ししました。
さらに、妊活の方法別に、自然妊娠の方法や体外受精などの不妊治療を用いて妊娠するためには、いつから妊活を始めたらよいか、妊活のスタート年齢と子どもを持つことができる確率の関係についてもお話ししました。
今回は、日本の現在の社会状況において、結婚する年齢と子どもを持つことができる状況を、社会保障・人口問題基本調査(出生動向基本調査)を用いて考えてみたいと思います。
不妊の原因の約半数は男性にあり!男性不妊の原因と一般的な治療法について
齊藤英和
2020年09月28日
不妊の原因の多くは女性にあると思っている人もいらっしゃるかと思いますが、現在は、男女どちらにもほぼ半々の割合で不妊原因があると考えられています。
平成27年度厚生労働省子ども・子育て支援推進調査研究事業「我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究」で行われた全国調査では、男性不妊の原因として最も多いのは「造精機能障害(精子を造ることができない、または造る精子の数が少ない)」が82.4%です。
次に多い原因は、「性機能障害(勃起できない、射精できない、逆行性射精{(射精された精液が体外でなく膀胱内に排出される)など)」が13.5%、第3位に「精路通過障害(精子の輸送経路が詰まっている)」3.9%となっています。
今回は、これらに対する一般的な治療について解説しましょう。
将来妊娠するための卵子凍結保存、そのメリットとデメリットについて
齊藤英和
2020年08月26日
卵子凍結保存については、皆さんもお聞きになったことがあるかもしれません。読者の皆さんの中には、実際に検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回の記事では、卵子凍結保存のメリットとデメリットについてお話しをしたいと思います。
将来、妊娠したいとを考えている方へ ~妊娠するための知識を世界の皆さんと共有しよう~
齊藤英和
2020年07月30日
私のコラムでは、今妊娠しようと考えている人や不妊で悩んでいる方、または将来妊娠を考えている皆さんに妊娠に関わる知識を情報として提供してきました。現在、このような知識を世界の人と共有して広めていこうと言う運動がはじまっており、そこではとても大切な情報を提供しています。
今回はその運動のご紹介と、そこで提供されている情報をもとに、改めて妊娠についてお話しします。
以下サイトでご覧になれる妊娠に関する動画やポスターは、英国の生殖学会(British Fertility Society)が提供してくれた動画やポスターです。
これらは「若い人に妊孕性の知識を伝えよう」という意図で作成されており、この動画やポスターを世界の皆さんに伝えたい(グローバルキャンペーン)と考えています。
不妊治療における「タイミング法」の3つのポイント
齊藤英和
2020年06月26日
さて、今回は不妊診療における基本中の基本、「タイミング法」についてお話ししましょう。
私たちは不妊で悩んでいる患者さんに対し、妊娠を目的として、排卵日に『「タイミング」を取ってください。』とお話しすることがよくあります。
「本日、セックスしてください。」とか、「本日、性交してください。」と表現するのは、不妊専門医の私でも、ちょっと気兼ねしてしまいます。
ですので、外国でよく用いられている「timed sexual intercourse」とか、「scheduled sexual intercourse」との表現を利用して、通常の不妊診療時には『「タイミング」を取ってください。』と伝えています。
不育症~その原因と治療法について~
齊藤英和
2020年06月02日
妊娠しても妊娠経過途中で流産されると、とても大きな心的ストレスを受けます。このことが何回も重なると、その心労はさらに大きくなります。
日本産科婦人科学会の産科婦人科用語集では、習慣流産(recurrent miscarriage )を3回以上連続する流産、すなわち不育症(recurrent pregnancy loss; RPL )を、妊娠は成立するが流死産を繰り返して生児を得られない状態と定義しています。
また、最近の報告では早期新生児死亡を含め、生児を得られない状態とする報告もあります。一方、欧州ヒト生殖医学会、米国生殖医学会、WHOは、不育症(RPL)を2回以上の流死産と定義しており、国によっても少しずつ定義が異なります。
“不安”による不妊治療への影響について~生殖医療とストレス~
齊藤英和
2020年05月12日
現在、日本中で新型コロナウイルス感染症が猛威を振っており、皆さんは今までの生活を抑制し、仕事は家でしたり、外食を避けたり、休日に行楽に行くのも控えているため、かなりのストレスを受けていると思います。
そこで今回は、生殖医療におけるストレスの影響について考えてみたいと思います。
新型コロナウイルス感染症~これから妊娠を考えているカップルへ~
齊藤英和
2020年04月04日
新型コロナウイルス感染症が猛威をふるうなか、とても心配されておられると思います。特にこれから妊娠を考えておられ方は、ご自分のことだけでなく、これから宿る新しい命についても心配だと思います。
妊婦と感染症
~特に新型コロナウイルスについて~
齊藤英和
2020年03月24日
現在、日本では新型コロナウイルスが猛威を振るっており、とても心配な状況になっています。
1more Baby 応援団のコラムの読者もとても心配されておられると思いますので、今回は、妊婦さんと感染症について考えてみたいと思います。
不妊の原因となる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)~その治療法と自分で出来ること~
齊藤英和
2020年03月12日
今回は不妊治療で、治療する機会の多い多嚢胞性卵巣症候群についてお話しましょう。
皆さんの中にはこの病気でなかなか妊娠に至ってない方がおられるのではないでしょうか。
多嚢胞性卵巣症候群は、卵胞が発育するのに時間がかかってなかなか排卵しない疾患です。
最近、この病気も増加傾向にあります。はっきりとした原因はわかりませんが、外国では太った方に比較的多くみられるので、体重の影響もあると思われます。
しかし、日本ではやせた方でもこの病気なっている方もいますので、体重だけが要因では無いようです。今回はこの病気について、みなさんに知識を深めていただくとともに、治療に関しても、私見ですが、自分たちでも心がけてみてもよい方法についてお話ししようと思います。
不妊治療における受精卵の評価について
齊藤英和
2020年02月03日
先回は生殖医療に関して私が期待している薬についてお話しました。実はもう一つ、期待しているものがあります。今回はそれについてお話したいと思います。
医療関係者にも読んでいただきたい「大切なイベントのための月経移動」
齊藤英和
2020年01月06日
今回は、私が生殖医療に携わってきて、現在最も期待する薬についてお話ししましょう。ちょっと難しい語彙も出てきますが、きっと皆さんも、期待を持って聞いてくださると思っています。
不妊治療の現状から妊活を考える ~日本の生殖補助医療の現状からライフプランの考察~
齊藤英和
2019年12月03日
1more baby 応援団の読書者のみなさんは、その名の通り、二人目を持つことに関心が高いと思います。もちろん、一人目を持つ子ことに悩んでいる方にも読んでいただきたいと思っています。今回は少し趣を変えて、日本の生殖補助医療(ART)の現状についてお話しましょう。
私はこの話題をほぼ毎年、新しい結果が公表されるときに、いろいろなところで解説しています。今年も日本産科婦人科学会雑誌11月号に、2017年の生殖補助医療の関する記事が掲載されたので、皆さんにお話したいと思います。
もちろん、一般不妊治療や高度生殖医療である生殖補助医療によって妊娠するよりは、自然に妊娠されるのがベストですが、頑張ってみてもなかなか妊娠しない時は、一般不妊治療や生殖補助医療の助けを借りることも大切と思いますので、日本の生殖補助医療の現状を知っていただくことは、決して損ではありません。
ライフスタイルと妊娠までにかかる期間 ~あらゆる年齢層の方ができる妊活⑤~
齊藤英和
2019年10月29日
ライフスタイルが妊娠に関係することはなんとなく、感じられておられると思います。
今回はライフスタイル、特に食生活に関わる因子を中心に、妊娠するまでにかかる期間に影響を及ぼす因子についてお話しします。
今回、ご紹介する研究はHassan MAHら( Fertil Steril 81; 384-392, 2004 )の研究で、とても重要な研究です。また、この要因は自分の意志で改善できることができる要因ですので、たぶん皆さんがライフスタイルを再考するのに役立つと思います。
この研究では体重、喫煙、アルコール摂取、コーヒーや紅茶の摂取、脱法薬物の使用、性交回数、生活水準について検討しています。このうち、妊娠までにかかる時間に影響した項目は、女性の体重、女性の喫煙、男性のアルコール摂取、女性のコーヒーや紅茶の摂取でした。
体重に関しては、以前に取り上げましたので(2019.7.02)省きますが、体重は妊娠するまでの期間ばかりでなく、お話ししたように、胎児・新生児の死亡率にも関係するので、とても重要な要因といえます。
「葉酸」の不足が不妊の原因にも!?
あらゆる年齢層の方ができる妊活④
齊藤英和
2019年09月18日
以前に、現在の食生活や生活様式だと必要とする量が足りないビタミンとしてビタミンⅮについてお話しました。
同様に、もう一つ現在の食生活では、体の機能を維持するのにぎりぎりか、または妊娠を考えると足りないビタミンである葉酸についてお話をしましょう。
ビタミンDの不足と妊娠について
~あらゆる年齢層の方ができる妊活③~
齊藤英和
2019年08月09日
皆さんはビタミンDが骨の形成、成長、修復に大切なホルモンであることはよく知っていると思います。ですので、このビタミンが不足すると、乳児の場合は、くる病が発症し頭蓋骨が柔らかくなって骨の成長に異常がみられ、座ったり、ハイハイができるようになる時期が遅くなります。成人でも骨軟化症という骨の病気が生じます。
妊婦が ビタミンD欠乏症になると、胎児でも欠乏症が生じ、新生児がくる病を発症するリスクが高くなります。しかし、ビタミンDの働きはそれ以外にもあり、産科領域においてはビタミンDが不足すると妊娠高血圧症候群や早産などの病気のリスクを高めることが知られています。また、幼児・若年者の肺活量の低下や言語発達の遅れ、思春期の骨密度の低下、20歳での摂食障害の増加などが指摘されています。
病院に行かず持っている卵子の数がわかるキット ~あらゆる年齢層の方ができる妊活②~
齊藤英和
2019年07月26日
今回は妊活中の皆さんにとって、とても重要なホルモン測定キットが発売されたので、お話しします。
皆さんは、ご自分の持っている卵子がどのくらいなのか?知りたいでしょう。
今回、病院に行かず持っている卵子の数がわかるキットが発売されました。
卵子の数を推定できるアンチミューラリアンホルモン(AMH)を測定するキットです。
以前は病院やクリニックに行って検査する必要が有りました。それはこの測定のために2~3mlの採血が必要だったからです。
しかし、今回、「Fcheck」というキットが発売になり、自宅で自己採血し、郵送し、約10日後にスマホで結果を閲覧することができるようになりました。
なぜこのことが可能になったかというと、この検査に必要な採血量が0.1mlと自己採血できる量で結果が出せることが可能になったからです。以前は採血量が少ないと測定結果が正確に出せませんでしたが、この「Fcheck」は0.1mlでも正確に測定することができる技術を開発したからです。
妊娠と体重の関係について~あらゆる年齢層の方ができる妊活①~
齊藤英和
2019年07月02日
皆さんは、私のコラムを読んでくださっている方ですので、妊娠適齢期がいつであるか、また、ライフプランをどのように立てたらいいか、ご理解していると思います。
もしあなたが、若い方でしたら、余裕をもって、妊娠適齢期に妊娠・出産・育児など、ご自分の考えるライフプランを今後立てていかれることと思います。
しかし、すでに妊娠適齢期よりは高齢になっておられる方は、とても心配になり、また、自分が妊娠適齢の知識を得る機会を与えてくれなかった社会に対して、また、知識は得ていても、社会制度がライフプランを実行に移すに足る環境になっていなかったことで妊娠適齢期を過ぎてしまったことに対して怒りのような感情をいだく方もおられると思います。
このような方のために、今回からどの年齢でも今から取り組める妊活についてお話したいと思います。もちろん年齢が高齢になるほど、妊娠する能力は低下することは否めませんが、各年齢の自分の持っている妊娠する能力を100%活用するための妊活です。
妊娠適齢期を知った方への実際のアドバイス
齊藤英和
2018年04月27日
さて、昨年、このホームページで、男女の妊娠適齢期のお話をしました。たぶん、皆さんはなるほどと思われたことと思います。しかし自分の現実に当てはめると、では、どうしようかと悩まれるのではないでしょうか。今回、その後得た情報の内、皆さんの決断に役に立つと思われるお話をしましょう。
心配だからこそ知っておくべき 妊娠・出産の正しい知識 〜妊娠適齢期から考えるライフプラン 全4回④【不妊・親の介護編】
齊藤英和
2017年07月21日
皆さん、こんにちは。国立成育医療研究センターで周産期・母性診療センターの副センター長をしている齊藤です。私は、産婦人科医として、長年にわたって不妊治療の最前線に立ってきました。そうした中で、みなさんにぜひ伝えたいと思っていることが〈正しい妊娠・出産に関わる知識を知ったうえで、自分に合ったライフプランを立ててください〉ということです。
心配だからこそ知っておくべき 妊娠・出産の正しい知識 〜妊娠適齢期から考えるライフプラン 全4回③【出産のリスク編】
齊藤英和
2017年07月07日
皆さん、こんにちは。国立成育医療研究センターで周産期・母性診療センターの副センター長をしている齊藤です。
心配だからこそ知っておくべき 妊娠・出産の正しい知識 〜妊娠適齢期から考えるライフプラン 全4回②【妊娠率と流産率編】
齊藤英和
2017年06月16日
皆さん、こんにちは。国立成育医療研究センターで周産期・母性診療センターの副センター長をしている齊藤です。
心配だからこそ知っておくべき 妊娠・出産の正しい知識 〜妊娠適齢期から考えるライフプラン 全4回 ①【男性編】
齊藤英和
2017年06月09日
皆さん、こんにちは。国立成育医療研究センターで周産期・母性診療センターの副センター長をしている齊藤です。